2016年1月22日

四国電力株式会社
取締役社長 佐伯 勇人 殿
責任団体
脱原発アクションin香川

質 問 状

1. ①子々孫々へと続く命のつながりの保障 ②ミカンの営農の保障について
南予の宇和海沿岸地域は、日本でも有数のミカン産地であり、黄金色に実るミカン畑は南予の誇りでもある。人々はこの地で先祖から受け継いだミカンの段々畑を守り、丹精込めてミカンを育て、そしてまたそれを子や孫の代へと引き渡していく。南予にとってミカンは単に商品価値、日々の生活の糧であるばかりでなく、地域の誇りであり、歴史であり、文化であり、心の糧でもある。

 ところでこのミカン産地はすっぽりと伊方原発の30km圏に収まる。ということは、伊方原発でひとたび過酷事故が生じれば、これらのミカン畑は全て放射能で汚染され、壊滅する。(ミカン畑の除染が不可能なことは福島の果樹園の事例によって示されている。)
 それはこの地にとっては、日々の生活の糧が奪われるというにとどまらず、過去を失くし、未来を奪われ、地域の誇りも、歴史も、文化も、心の糧も根こそぎ奪われることを意味する。それは絶対許されることではなく、絶対にあってはならないことである。
 だからこの地のミカン農家をはじめとする人々は、万が一にもそういう危険をもたらしかねない伊方原発の再稼働に強く反対している。このことに対して四国電力は地域社会に対する責任を果たすために答える義務があるが、ここではミカン農家の人たちが最低限これだけのことは、と要望している事柄を提起し、それに対する真摯な回答を求めたい。

 その要望は二つの点、すなわち①子々孫々へと続く命のつながりの保障 ②ミカンの営農の保障 に要約される。

 ①子々孫々へと続く命のつながりの保障とは、過酷事故に際して被ばくを避ける、被ばくなしに避難できる方策の保障である。とくに未来をになう子どもたちや若い人たちに被ばくという禍根を背負わせないためにどうすればいいのか、どうすれば被ばくを免れうるのか、そのことに四国電力はどのように向き合い、どういう方策を検討してきたのか、また現に検討しているのか、について答えていただきたい。(例えば、スイスのように各家々に地下シェルターを設置して1ヵ月家族ががそこに退避できる備えをなすよう、四電は保障すべきだという意見もある。)

 ②ミカンの営農の保障とは、現在のミカン畑が放射能に汚染され、除染もできず、住むこともミカンの営農もできないのだから、代替地を用意し、かつそこでの新たな営農が現在のような状態に達しうるまでの期間(だいたい40年くらいと見込まれる)を補償するということを意味する。四国電力はそれをどう試算し、そのための用意をどのように準備しているのか、について答えていただきたい。福島での補償のあり方は全く将来設計の立たない、その年しのぎのものであり、農家の生殺しというべきものである。ミカン農家はあくまでミカンの営農の保証を求めているのであり、代替地と40年間の補償を再稼働前に呈示することを求めているのである。

 ③また、上記について、四電はミカン産地での住民説明会を再稼働前に実施すべきである。住民の不安と要望にしっかりと向き合うことが、地域社会に対する責任であろう。

回答
① 電気事業者としては住民に迷惑はかけれない。新しい規制基準を上回るような事故対策を立てて
いる。既存の設備が使えない場合でも予備を用意している。国の許可も頂いている。
② 補償は難しい問題。原子力責任賠償法でまず対応する。もちろんそれだけで済まないことは福島
事故でわかっている。新しい組織ができてそこで今補償が行われている。福島の先行事例が今提示でき
るもの。
③ 地元での説明は戸別訪問や地域の集会などのに出て行っている。十分とは思っていないが、事業者
としては放射性物質を出さないことに尽きる。出してしまえば取り返しがつかないことは事実。

 
2.フィルター付きベント設備の運用問題

・15年3月25日付けの愛媛新聞記事によれば、四電が伊方町環境監視委員会会合で「事故時に原子炉格納容器の爆発を防ぐために内部の気体を外部に放出する「フィルター付きベント」設備を2015年度中(つまりこの3月中)に設置する計画を明らかにした。」とされていたが、14日には、19年度に完成させると発表した。
 四電が目指す今次の再稼働には活用せず、規制委から与えられている5年間の猶予期間を活かして設置、使用を先送りすることとなったようだが、そもそも再稼働の前提として説明してきたのではないか。説明をした伊方町に対しては背信行為ではないのか。

回答 再稼働が前提ではない。15年3月にフィルター付きベントを付けると伊方町に伝え
たののは事実だが、その後の規制基準の追加でできなくなったので延期した。伊方町にも
伝えてある。

・このフィルター付きベント設備を運用することは即ち、格納容器から放射能を人為的に放出することになる。フィルターはヨウ素やセシウムなどをトラップして濃度を格段に下げる役には立つものだとしても、初期被曝の重要な要因となる希ガス類はこのフィルターを素通りしてしまうはずだが、この意図的ベントによって、敷地境界における線量が元々の立地審査指針の基準値を超えてしまう問題が起こるのかどうか、データを開示してほしい。

・運用の仕方としては、過酷事故対策のどういうプロセスのどの時点でベント作業を行うのか、積極的に早期のベントを行う姿勢なのか。

回答 後の2点についてはまだ決まっていないのでお答えできない。現状確かにフィルターが付いていないが、そもそもベント作業は必要ない。規制基準になっているから付けるだけ。データーはない。希ガス類が取れないのは事実。

 
3.原子力防災への貢献と労働者保護について

 現在設置されているモニタリングポストの線量計は警報を出すのに不適切な測定範囲の機械となっています。
 特に国が松山、宇和島など愛媛県内の主要都市に置いているポストには、10マイクロSv/h以下しか測れない低線量率計しかありませんから、これらの地点では、即時避難のOIL1(500マイクロSv/h)、一時移転のOIL2(20マイクロSv/h)の警報がともに出せません。
 二種の線量計がついている県のポストでも、フルスケールが100ミリSv/hという高線量率計でフルスケールの0.5%以下の小さな桁の数値を測るしかなく、精度/確度が低い、つまり誤差が大きくなります。これらのポストを避難指示の判断のためには使えないのではないでしょうか。
 そうなると、実際に測る業務に関わっている四電の計測者があちこちで可搬式計測器で測ることを原子力災害対応で要請されることになります。
どの程度被曝するかもわからないところに人間が計測に行くという危険な作業が強いられますが、人員を出すつもりはありますか。
 これ以外にも過酷事故の時には様々な被曝作業が想定されます。事故収束作業の人員配置をどのように考えているのか。
緊急時の作業員の確保をどのようにするつもりなのか。
収束作業にあたる労働者の安全確保をどのようにするのか。また、緊急作業者保護要員を募集していると聞くが、四国電力では行っているのか。

回答 伊方発電所に32名が常駐している。全員が放射線作業従事者で専門的技術と知識を
持っている。四国電力の社員と協力会社。32名とは別に周辺の作業に従事するための人員が80名前後いる。四電の持っている可搬式線量計はもちろん20ミリSvも測ることができる。事故時の作業にあたることによる同意書のようなものはまだとっていない。

 
4.電力事業者としての責任

① 原子力発電は、展望のない発電方法であることから、電力事業者の収益性や企業倫理の点からも、原子力発電事業からの離脱を、早い段階で主体的に決定することが、電力事業者として合理的と考えるが、貴社のご見解は。
回答 原子力から撤退する気はない。

② 伊方原子力広報センターに対して、これまで6億円を超える寄附を行っているが、愛媛県や伊方町という自治体とは一線を画すべきであり、その意味で毎年2000万円におよぶ寄附は取りやめるべきである。そもそも、寄附金の原資は県民の電力料金から賄われていることから、倫理的に問題と考える。貴社のご見解は。
回答 寄付はやめない。

・・・・・・

第一回目の交渉の積み残し質問
第一回目 11月30日10時~11時半 四国電力本社2F会議室にて

1.伊方原発は8ヶ月の長期広域停電に耐えられますか
 南海トラフ巨大地震のおりに1ヶ月単位の長期広域停電(=外部電源喪失)が起こる可能性は認めた上で、非常用ディーゼル発電機の起動に失敗する確率を明らかにできない時点で、四国電力さんには全電源喪失にはじまるメルトダウン事故を起こさせないことの証明をする意思がないものと判断しました。なので非常用ディーゼル発電機の起動に失敗する確率は、類似の大飯原発の数字と同じと考えて、過酷事故を起こす確率が非常に高いとみなさざるを得ません。四電は開示を拒む態度を変えていただきたい。
 そもそも巨大地震の時には、四国全域規模での1ヶ月程度の広域停電をやむなし、と考えている四国電力の無力感と他電力頼みの無責任さを読み取れる回答でした。頼みの他電力もまた被災を受けることは河田教授の研究そのものに示されていますので当てにはなりません。重電メーカーの多くの瀬戸内海に立地した臨海工場もまた津波被災をすることも「想定外」にすべきではありません。

2.水蒸気爆発問題
【質問】 四国電力の技術者は、

・岩波『科学』の16年9月号
  http://gotomasashi.blogspot.jp/2015/10/pdf-20159.html
 で紹介された高島・後藤論文を読んで問題の指摘を把握しているか。
・「IAEAの安全基準シリーズ 原子力発電所の原子炉格納系の設計」
  https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/content/000126742.pdf のp.70ー74にある、水蒸気爆発対策の検討が必要との指摘を把握しているか。
・関西電力が福井地裁異議審で答弁した水蒸気爆発についての見解をフォローしているか。
・解析コードとして、規制庁も保有するMELCORでの水蒸気爆発についての検討評価を今後行わないのか。念のためであれ解析コードを用い、パラメータを変えて発生確率を探るのが安全を第一に考える態度ではないか。

3.佐田岬半島の避難困難者問題

【質問】伊方原発で働く電力社員、協力会社員などの家族も伊方町のPAZ圏内に居住しており、企業にとっての心配要因でもあるはずです。家族の自助のみに頼るのではなく、共助としての社員家族の役割を考えられたことはありますか。どのような社員への防災減災教育を行っていますか?

4.電力会社の基本使命とは何か/再稼働の必要性
 国策に従うことよりも、顧客である地域住民の不安を解消するべきです。

5.出資の撤廃を
 ゼロ回答と認識しました。しかし国策民営の原発政策といえど、奉加帳方式からは体力のない電力会社はどんどんぬけるべき、面従腹背という対応の仕方もあるはずです。

6.三菱製蒸気発生器の問題
 伊方3号機の蒸気発生器は、美浜2号機の91年の事故の前に製造されたものなら不安材料と言える。事故直後に製造されたものであるとすれば、ちゃんと検査できて、安心材料はあるものなのか?

7.中央構造線活断層帯の地震は検討されたのか
(11.で一括して聞きます。)

8.事故発生確率の過小宣伝問題
【質問】百万年に1回という数字が一人歩きをしているが、規制委はそのままうのみにしたのか、実際には規制委は知らないよという判断をしているのかもしれず、本来出すべき確率論的リスク評価は2年後3年後に出される予定で、今は確率論的リスク評価というのが出来ていない状態なのに、百万年に一回しか5テラベクレル以上の放出を起こす事故はないと四国電力は言っている、そのこと自体、詐欺的な過小宣伝行為ではないのか?
 個別の収束策に失敗する確率まで算出しなければ収束策に成功する確率は示せないと考えるがどうか。仮にすべてのイベントツリーを総合した数字は今の段階で出せなくても、個別の、5.1テラベクレルに放出を抑えられるという「最悪の」事故収束達成シーケンスが失敗する確率は本来検討されたはずである。それが、溶融炉心を下部の注水で受け止め冷却する対策が「水蒸気爆発」によって格納容器が壊れ、失敗する確率のことであるが、2-aでの確率を求める質問に対して四電が開示を拒んだのは、水蒸気爆発で損傷が起こらないという四電の主張に現時点では根拠がないためではないのか。

9.黒塗り白抜きの補正書問題
 そもそも核核酸防護の機密事項以外について開示をしないことがおかしい。

10.住民説明会の開催否定
【質問】開く意思はない、と聞きましたが、それで充分四電さんが、「すべての住民全ての皆さまの信頼関係を強固なものとして社会責任を果たしていくこと」にはなりません。
 まずは説得のために自治会へ廻っている際の説明資料と、その場で出てきた意見、質問への回答の事例を公表いただきたいがいかが。

11.基準地震動の過小評価/再評価続きでも適合しつづけ
【質問】地震動4000ガルの実例が用いられない問題は一般人にはとうてい理解できない。
これまでの説明で足りないものは何だと思いますか。
地震が多発し、愛媛県においては、中央構造線活断層系による大地震と南海トラフ巨大地震の連関、そして前後しての内陸地震の多発が懸念されているなかで、原発の事故を完全に排除することができないと考えるが、放射性物質の拡散という異質な被害を引き起こす原発について、抜本的な安全対策とは廃炉であると考えるが、貴社のご見解は。

12.放射性廃棄物立地問題
【質問】今後核燃料サイクルの行き詰まりに伴い、六カ所村のプラントに送った使用済み燃料が四国電力に変換された場合、どういう保管の手段を採りうるのか。

13.次回会合の交渉
 仮に技術者の出席が難しいのなら、松山の原子力本部の場で別途やりとりをする会合を開いて戴くのが筋ではないか。

14.その他
 
 

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