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「避難の権利」ブログ 2014年7月 3日 (木)
これでも再稼働?~川内原発の避難計画の問題点について

http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/post-5b76.html

【PDF版】

本紹介
原発避難計画の検証–このままでは、住民の安全は保障できない

出版社 合同出版   著者 上岡直見
発行日:2014.1.31 | ISBN:978-4-7726-1177-0 |ページ数:168ページ
販売価格(税抜き)1,800 円

***** 本書紹介 *****(合同出版ホームページより)

福島原発事故後の避難の実態をふまえ、
交通工学的な観点から全原発を検証。その結果、
住民の被ばくを避ける現実的な時間内で
避難することは、全原発で不可能だとわかった!

〈こんな状況で再稼働などできない!〉
● 事故の進展や地形・気象条件などに応じて、住民の被曝を最小限にするための最適な行動を指示するマニュアルができていない。
● 原発から30キロ圏内のうち6割超の市町村が、避難計画や具体的な避難先を固めていない。
避難対象人数や面積が大きすぎて対応しきれないためである。
● そもそも、原子力発電所の災害時に、住民が被爆せずにすばやく避難できる「避難計画」など、できていなかった。
● こんな状況で、2013年6月、原子力規制委員会は新たな規制基準を発表。
各電力会社は続々と再稼動を申請した。

***** もくじ *****

 
はじめに

◎第一部 避難計画の検証
 第一章 福島での避難実態
 第二章 防災計画と避難の考え方
 第三章 避難に関する問題点
 第四章 交通工学から避難を考える
 第五章 これから始まる「最悪」シナリオ

◎第二部 各原発の避難の分析
柏/東通/女川/福島第一・第二/東海第二/柏崎刈羽/浜岡/志賀/敦賀・もんじゅ・美浜/大飯・高浜/島根/伊方/玄海/川内

チェックリスト あなたの町の避難チェック

あとがき
 

***** 作者紹介 *****
上岡直見(かみおか・なおみ)

1953年東京都生まれ。環境経済研究所代表。技術士(化学部門)。1977年早稲田大学大学院修士課程修了。1977年~2000年化学プラントの設計・安全性評価に従事。2002年より法政大学非常勤講師(環境政策)。著書に、『交通のエコロジー』(学陽書房、1992年)『持続可能な交通へ─シナリオ・政策・運動』(緑風出版、2003 年)『脱・道路の時代』(コモンズ、2007年)『脱原発の市民戦略』(緑風出版、2012年)『原発も温暖化もない未来を創る』(共著・コモンズ、2012年)・『国土強靭化が日本を壊す』(緑風出版、2013年)等多数。
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【地域の活動紹介】
北海道原子力防災訓練の問題点

Shut泊 共同報告者:マシオン恵美香・深町ひろみ・小林善樹

昨年10月8日(火)、北海道と泊発電所30km圏内の13町村で実施された原子力防災訓練を参観し、以下のような問題に着目した。

◆訓練の前提となる事故想定の問題

  • 「事故当日の風向き」は南風と設定され、屋外への避難訓練は泊原発の30km圏内の北側6カ町村(泊村、共和町、神恵内村、積丹町、古平町、余市町)の住民約3万9千人の2%に過ぎない776人のみとなっていた。偏西風を考慮すると避難先の小樽、札幌方面の住民にも影響があるため、風向き、避難先の設定は相応しくない。
  • 事故想定が福島第一原発事故に比較して軽すぎる。
  • 震源の想定が内陸であり、津波を考慮していない。

◆実施された原子力防災訓練の中味に関する注意点

  • 避難を誘導する側(自衛隊員など)は防護服・マスク着用だったが、避難訓練参加者[住民]
    はマスクをつけている人さえ少なかった。
  • 障害者などの災害弱者の中でも「要援護者」役は健常な方が代替していたため、実際の避難に必要な本人の練習にはならず体験がなく、災害弱者のためのゆったりした所要時間についての配慮がされていない。
  • 全住民避難のためのバスの確保台数が圧倒的に足りないことが予想される。交通網寸断の際は自衛隊ヘリや船を使うというが、悪天候、地震や津波被害のある場合には確約されない。
  • 避難路の渋滞対策は「コンビ二で水食料提供」、「コミュニティFM局からの情報発信」のみ。

◆事故想定と避難の手順

  • 避難対象はUPZ内の住民のみ
  • 地震、津波、高波、浸水などの被害想定をせず、津波襲来の可能性がある港湾にスクリーニング[体表放射線測定]等の措置のための救護所を設置することは適切か?
  • 隣接する岩内町では屋内退避とするなど、不合理な想定による指示もある。
    経口安定ヨウ素剤

    昨年から9カ町村の役場や施設など13カ所に置かれているが、原発から半径5km圏内の住民にさえ「劇物である」との理由で戸配されておらず、設置場所と配布場所の周知も不十分。服用の指示を出す責任部署、責任者が特定されていない。

    昨年から総数で8万錠を備蓄。「事故発生時には、安定ヨウ素剤を求めるより、むしろUPZ外へ迅速に避難したほうが良い」としている。

◆災害時要援護者支援対策

  • 「有事の際に放射能対策に特化した内容が盛り込まれているか?」「実際に災害弱者の意見を取り入れる形で練られているか?」などの質問に対し、北海道の回答には「無理な移動により命を落とすケースが考えられる重度の災害弱者については、その場に留め置く」という趣旨の文言が含まれている。
    災害時には介護者も共に留め置かれる可能性が懸念される。
  • UPZ圏内の170以上に上る医療機関や社会福祉施設で、まだ具体的な避難計画の策定に至っていない。

◆泊原発の防災避難路について

  • 泊原発は、北海道西部の積丹半島の西側の付け根にあり、半島をめぐる国道229号線は原子炉建屋から370mの至近距離を通っているから、もし原発事故が起きたら、半島北側の泊村と神恵内(カモエナイ)村の住民は国道を北側に、半島を一周して避難せざるを得ない。ところがこの国道は海岸の崖下をたどる道であり、半島先端の景勝地神威岬までの約35kmはトンネルが連続し、海が荒れると通れなくなるし、地震があれば崖崩れも津波も心配。

    神恵内村から山越えで半島の東側に横断する道道998号線(32.5km)もあるのだが、標高700mの峠道であり、豪雪地帯の積丹半島では冬場には通れないことが多く、地震があれば崖崩れも懸念される道だ。残された避難方法は船とヘリだが、荒天になればこれも使えなくなってしまう。したがって、泊村の約千八百人、神恵内村の約千人は逃げ道を失いかねないのだ。これが一番懸念される問題だ。

  • 泊原発の東側の共和町と南側の岩内町からの避難路にも難点がある。東側に国道276号線を通って国道5号線に抜ける道は、卓越する西向きの風の風下方向であり、海岸沿いに南下する国道229号線は景勝地雷電海岸を通るトンネル続きで、荒天時には通れなくなるし、崖崩れの懸念もある。また、東南に向かう道道66号線は標高800mの山道で冬場には通れないことが多い。

【地域の活動紹介】(たんぽぽ舎メルマガTMM:No1993)
~北海道通信(泊原発現地)~

10月5日、1500人の再稼働ストップ集会
10月8日、実際には役立たない形骸化した防災訓練

小林善樹(Shut泊)
10月5日(土)13時、泊原発の見える岩内町フェリー埠頭緑地で「STOP 泊原発の再稼動!さよなら原発北海道集会 in いわない」が開かれ、ジャーナリスト・作家の鎌田慧さん、たんぽぽ舎・柳田さん、奥野さん、岩下さん、山田さん、原発さよなら四国ネットワーク・井出さん、原発問題住民運動福井県評議会・林さんと全国からの参加も含めて1500人が集まりました。

 泊原発の再稼動を止めましょう!そして、すべての原発をなくしましょう!さようなら原発!の集会アピールを採択したあと、町内のデモ行進に出かける前に、色とりどりのエコ風船千個を飛ばし、飛んで行く方向を全員で確認しました。

 もし泊原発が事故を起こしたら、放射性物質がどの方向にどこまで飛んで行くかを目に見える形で実感してもらうためです。風船には到着報告用返信ハガキをぶら下げてあり、返信ハガキが8日から届き始めた。今のところでは約180km離れた旭川市に翌日朝には届いており、約130km離れている赤平市からは「他人事のように感じていたが、この風船を見て恐ろしさを感じた」 とのハガキが寄せられています。

 また石狩郡当別町の道民の森という飲料水の水源を守る森でも拾得されており、芦別市でも8日には拾得されていました。約60kmしか離れていない札幌市の北海道庁の高いイチョウの木にも引っかかっているのが見つかりましたが、確認できないうちに、強風で飛ばされてしまったようです。

10月8日(火)には防災訓練がおこなわれ、市民たち13人が、行政関係らしき14人とともに、北海道庁手配のバスに乗って視察して来ました。

 退避の訓練は6町村の住民2%、776人だけが対象で、陸路を走行したのはバス30台、自動車26台、福祉車両1台に過ぎず、渋滞するほどではなかったようだ。 自衛隊は中型ヘリ、大型ヘリ(40人乗り)各1機、12人乗りの車両(特車?)3輌を出していたし、小樽港岸壁に設けられたスクリーニングでは、自衛隊の化学兵器担当部門が除染のデモンストレーションをやっていた。

 総じていえば、シナリオ通りに準備された「絵に描いた餅」、「茶番」に過ぎず、実際には役立たない訓練だ、というのが正直な感想でした。

【地域の活動紹介】
平成25年度 北海道原子力防災訓練参観 報告2

報告者 ベクレルフリー北海道 マシオン恵美香
【渋滞対策支援訓練】
スーパー、コンビ二等でのトイレ使用及び食料の提供(水とパンの受け渡し) 渋滞ではなくても、有事の際には水や食糧を住民に提供するため、これら商業施設の協力は必要。
【被曝者搬送(処理)訓練】
余市町黒川地区→余市協会病院(北後志消防搬送)被曝医療活動泊発電所→岩内協会病院(岩内寿都消防搬送)初期被曝医療機関

■原子力防災訓練実施要綱裏面に添えられた地図を見ると、防護対策地域は塗り分けられている。今回、訓練に参加するのは泊原発から30kmの同心円周辺13ヶ町村。しかし、西北の風によって放射能が流れることが懸念されるのは東側。すぐ横に位置する京極町、喜茂別、札幌の一部までも含まれるのでは?

■屋内退避地区に指定された範囲は避難区域より広い。参加者の内訳は85.000名(13ヶ町村人口の合計)と記されているが実際は7600名、圏外避難を行うのはそのうち、たった800名と非常に少ない。屋内退避訓練の内容も検証すべき。

■バスに乗っていた参観者が昼時間に余市町の学校に℡連絡を試みた。校長が朝、体育館に生徒を集め、「原子力防災訓練の実施日であること、有事の際はこのまま家に帰れない場合があること」をだけ告げて通常通り授業を再開した、と報告を受けていた。・余市町のある小学校では、原子力防災の訓練日だというのに、その内容に対応しておらず、「津波」を回避するため高台に移動する避難訓連を実施していた。かえって被曝を避けられず、危険。

■原子力防災訓練実施中の連絡が入るはずなのに、携帯電話への緊急時エリアサービスを私を含め、バスに乗っていた人々の多くが受信できなかった。

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訓練内容・施設に関するバス内のやり取りメモ

参加者 Q7.
 「災害弱者(障害者等)の訓練参加について」
バスに添乗した担当者(*原子力安全対策課)
A7. 共和町から車椅子の方1名、余市町から知的障碍の方2名の参加。

Q8.
 「政府機関あるいは独立行政法人、議員の参加はあるのか? どの省庁のどんな立場が参加するのか?」
A8.
 「規制庁の地域総括官 黒木さん、泊原発規制事務所、出先機関、開発、消防、自衛隊から関係する部署に協力を依頼している。厚労省も関係しているが、障碍者など保健福祉関係の参加についてははっきりしない。(救護活動をする労働者に関係して特定の部署課が参加している)

Q9.「スクリーニングは何を区分し、区分した後の処理はどうするのか?」
A9.「測定後、放射線被曝量に応じ、除染、30キロ圏外の医療機関への搬送などを行う」

Q10.「福島原発事故後、30キロ圏外も避難区域となった。UPZ内だけの訓練では不十分なのではないか?」
A10.「本年は5キロ内PAZ内と北側の町村を中心に訓練を行った。数年後までにもちまわりで13ヶ町村全てがなるべく多くの条件の訓練を実施できるよう計画する見通し。

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参考資料
北海道原子力防災 開催案内 https://docs.com/WNDA
北海道原子力防災訓練資料(当日資料) https://docs.com/X3P3
北海道原子力防災のしおり https://docs.com/X3P4

福島原発事故後はじめて、国主導の原子力防災訓練が10月11日、12日に開催されました。
川内原発(鹿児島県)の過酷事故を想定した原子力防災訓練の参加報告を紹介します。(事務局)
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2013/10/11~12 鹿児島県 原子力防災訓練の報告(別ウィンドウが開きます)
PDF版

報告者 再稼働阻止全国ネットワーク 岩下

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(鹿児島県ホームページより)
平成25年度原子力総合防災訓練について
http://www.pref.kagoshima.jp/aj02/bosai/kunren/h25gensiryokubousaikunren.html
平成25年10月11日(金曜日)10時から17時30分及び10月12日(土曜日)11時から16時30分の2日間、国主催で薩摩川内市及びいちき串木野市を中心に、県や関係市町村をはじめ、多くの関係機関や住民の方々の参加のもと、広域避難など様々な種目の原子力総合防災訓練が実施された。

訓練概要
平成25年度原子力総合防災訓練の「お知らせとお願い」(PDF)
http://www.pref.kagoshima.jp/aj02/bosai/kunren/documents/34981_20131008114158-1.pdf
 

3.11以後、初めて国が鹿児島県川内原発を対象に実施した「原子力総合防災訓練」を監視したので、その概要を報告する。(再稼働阻止全国ネット 木村)

(鹿児島県ホームページより)
平成25年度原子力総合防災訓練について
http://www.pref.kagoshima.jp/aj02/bosai/kunren/h25gensiryokubousaikunren.html
平成25年10月11日(金曜日)10時から17時30分及び10月12日(土曜日)11時から16時30分の2日間、国主催で薩摩川内市及びいちき串木野市を中心に、県や関係市町村をはじめ、多くの関係機関や住民の方々の参加のもと、広域避難など様々な種目の原子力総合防災訓練が実施された。

訓練概要
平成25年度原子力総合防災訓練の「お知らせとお願い」(PDF)
http://www.pref.kagoshima.jp/aj02/bosai/kunren/documents/34981_20131008114158-1.pdf

【第1日】  【第2日】

【第1日】

●秘密裡に進められた防災訓練計画

原子力総合防災訓練は、9月初めに原子力災害対策本部で決定しておきながら、10月8日時点では国も鹿児島県も薩摩川内市も、ホームページにアップせず秘密裡に準備し、やっと9日の原子力規制委員会で11日・12日に実施することを確認、報道もされ出した。何か変?

●地震で川内原発2号機自動停止、東電事故を思い起こさせる

11日朝9時に薩摩川内市役所で訓練の概要を聞き、市の原子力災害対策本部を覗き、すぐ近くの原子力規制庁のオフサイトセンターの事故現地警戒本部を傍聴。川内原子力規制事務所(OFC:オフサイトセンター)は2つのスクリーンを囲ったコの字型会議室。スクリーンに九電や官邸や県や川内市の画面を表示、着席者は一人だけ。沢山の報道カメラが包囲。10時に地震発生、10時03分:警戒本部設置、10時12分:2号機原子炉自動停止、思わず緊張して傍聴。

●テレビ会議が故障?

正門危険物貯蔵庫火災発生、土砂崩れ発生、10時15分:災害対策室設置、10時35分:PAZ圏内の要援護者に避難準備を要請。10時40分:地上回線復旧でアナウンス活発化…。しかし、スクリーンが急に暗くなりテレビ会議中断。あふれていたメディア関係者も手持ち無沙汰に散っていく。会議再開は11時40分。

●自衛隊員、JNES職員、原子力ムラが多数参加

川内OFCの会議室を囲むようにして6つのチームもそれぞれで動く。プラントチーム、放射線班、実働対処班、緊急時モニタリングセンター、総括班、広報班など。会議室周りの各チーム員が行き来し、陸上・海上の自衛隊制服も数人が出入り。

●SPEEDI、応答にたらいまわし20分

SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)について、予測しているのか情報を住民に公表したか等の地元監視者からの質問に、プラントチームは広報班に広報班は質問回答係りにとたらい回ししてなかなか答えられない。
「緊急事態発生前なので住民への広報はまだ」と、回答があったのは20分後。何とも頼りない訓練実施者たち。

●災害防げるの? 壮大な無駄では!

2時間ほどOFC内の様子を傍聴して感じたのは、本当にこれで災害を防げるの?という疑い。事象発生時刻などに幅を持たせた比較的リアルな訓練で、それ故に混乱や遅れも頻繁に発生。小声の報告を議長が咎めずそのまま進行して形式的会議が露呈する場面もあった。本番時の混乱はいかばかりか、と心配になった。
これで本当に災害を防止できるか?

●要援護者の避難は45分遅れ

川内原発から5キロ程の水引地区(PAZ圏)の要援護者避難は、待てど暮らせど救急車が到着せず、「先ほど要請したからすぐに来る」と聞いた後も30分経っても現れない。結局予定より1時間ぐらい遅れて到着。元気で写真撮影をいやがった婦人は介助者かと思っていたら、その人が担架に乗せられて病院にと搬送されて出た。

●小学生も中学生も保育園児も避難するがヨウ素剤配布は避難集合地で

水引小学校では、パトカーと大型バス1台が運動場に入った。ジャングルジムで遊ぶ小学2年の男の子達がいろいろ教えてくれる。先ほど全体昼礼が終わった、小学5年がバスで連れて行かれる、ヨウ素剤は配布されていない、等と。小学5年約40名が静かに運動場に出て来て大型バスに乗り、パトカー先導で川内アリーナに向かって出発。

●川内アリーナに大型バス5台終結

原発補助金で建設された高台のドーム集合「川内アリーナ」に移ると、既に大型バス5台が並び、順次出ていくところ。中学生のバス、保育園児のバスが順次出るのを見届ける。ヨウ素剤を模したカードを全員がここで配られたという。ちょっと遅すぎるのでは。

【第2日】

●2日目は緊急事態宣言

訓練2日目も川内規制庁オフサイトセンター(OFC)に入りテレビ会議を傍聴。一般の人は別室の部屋でと一旦追い出されたが、その別室では音声が出ないと聞き、「とんでもない。防災訓練に住民を参加させないのか?」と問い詰めて、OFCに再入場。

メディア陣に交じって待機していると、11時:訓練開始、原子力災害対策本部会議が官邸で開催される。規制庁長官、首相、規制委員長が順に悠長にしゃべって非常事態宣言を発出、何とも非現実的。OFCでは、県知事も市長も、意見を問われたけれど「特にありません」と緊急時に住民の安全を願う言葉すら発せず。

●避難者の除染は形だけ!

住民安全のため3801名が避難、うち400名がバスで避難、の想定。UPZ圏から避難し放射能汚染検査をする日置市公民館を見学。バスで到着する避難者住民が公民館に入る。受付を通り、大部屋に入ってトリアージを受けて「要治療」と「治療不要」に分類される。「治療不要」組は次に1次スクリーニングで体表の線量を測定される(全身に渡り時間がかかる)。そして「除染無」と「除染有」に分類される。残念ながら除染ゾーンは看板のみ。
それにしても、バス避難者のみの移動で、交通渋滞も起こらない。もし実際に地震―緊急事態が起こった場合に、道路不通が起こらないか、道路の渋滞が起こらないか? 実際とは大分かけ離れているよう。

●沢山の疑問

2日間の原子力総合防災訓練を監視し終わって多くの疑問が湧いてきた。
・事故発生時にのんびりテレビ会議してられるか?
・地震後非常事態まで1日以上経過して東電福島原発事故の時と比べて長過ぎではないか?
・交通遮断や渋滞を考えると要援護者を含め住民避難は不可能ではないか?
・なぜSPEEDI情報を住民に提供しないか?
単純化しても非常に大変な訓練!なぜここまでして原発を動かすのか?

●原子力総合防災訓練は再稼働の露払い?

政府主催の訓練は、九電・官邸・川内規制事務所・県市の間のテレビ会議を主軸に実施し、各プレイヤーが皆「反省点多い」との言葉を残して終わった。3.11以降初めて国が実施したのは再稼働促進のためか? 規制委の田中委員長が、(防災)指針を作るのは規制委(サポートは内閣府)、実施は自治体、と話していたが、OFCでは規制庁が仕切っていた。国の縦割り分担も曖昧で、まるでテレビカメラによるショーを見せただけではないか。
これで原発14基の再稼働への道を進まれてはかなわない。批判を強めよう!

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10月8日に開催された北海道の原子力防災訓練 参加報告を紹介します。(事務局)
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2013/10/8 北海道原子力防災訓練の報告(速報版)(別ウィンドウが開きます)
PDF版

報告者 再稼働阻止全国ネットワーク 岩下

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(北海道ホームページより)「平成25年度北海道原子力防災訓練の実施について」
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sm/gat/bousaikuren251008.htm

北海道と関係町村(泊村、共和町、岩内町、神恵内村、寿都町、蘭越町、ニセコ町、倶知安町、積丹町、古平町、仁木町、余市町、赤井川村)では、北海道電力(株)泊発電所における原子力災害に備え、平成25年10月8日(火)に原子力防災訓練が実施された。

訓練実施要綱(PDFダウンロード)
 

日本原子力文化振興財団ホームページより
事故から考えるこれからの原子力防災 2013年2月22日
京都大学原子炉実験所教授、研究炉部長
中島 健 氏(なかじま・けん)

── 福島第一原子力発電所事故から2年経ちますが、事故についてどのように見てこられましたか。

中島 防災の観点から申し上げたいと思います。2003年まで、日本原子力研究所にいましたが、1999年にJCОの臨界事故が起きました。直後に対策本部が立ち上がり、そこでどうやって臨界を止めるか等、現場でいろいろと活動しました。

 その関係でその後、アメリカやヨーロッパなど海外の防災体制の調査などに国の業務で行きました。その結果「日本も防災対策をきちんとやる必要がある」とレポートし、オフサイトセンターや原子力安全・保安院ができたりと、防災体制の見直しがなされました。

そのJCО事故から10年ちょっとで福島の事故が起きました。すぐ収束するかと思いましたら、どんどん被害が大きくなっていきました。そのとき疑問に思ったのは、オフサイトセンターによる情報の集約や発信、SPEEDIの活用、また原子力災害対策用のロボットの起用など、JCO事故を踏まえ用意をしていたことが全く機能していないことでした。( つづきを読む

2大事故でシビアアクシデントと「安全文化」の必要性が問われることに
── スリーマイルとチェルノブイリ、過去に起きた2大事故を知ることも重要ですが、どのような事故だったのでしょうか。
── 福島の事故との違いという面ではいかがでしょう。

評価設定が7段階しかないため、福島とチェルノブイリは同じになった
── 事故評価尺度がチェルノブイリと同じとなると、事故の原因や放出された放射性物質の量に関係なく、同じ程度の事故だったのかと考えてしまいますね。
── 福島の事故で得られた教訓とは

結局、安全の確保の最後は人だ

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中島 健 氏(なかじま・けん)

1957年 札幌市生まれ。82年北海道大学大学院工学研究科原子工学専攻修士課程修了後、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)において、臨界安全性および原子炉物理に関する実験研究に従事。99年、東海村の㈱JCO燃料加工工場臨界事故の際には、国の現地対策本部員および日本原子力学会事故調査委員等として、事故の収束対応、事後の事象解明を実施。03年に京都大学原子炉実験所助教授、07年より現職。専門は原子炉物理、臨界安全。

―地域防災計画(原子力災害対策)について―

2013/4/13~14開催・全国交流会での配布資料
(文責・布施哲也)

(1) 自治体と地域防災計画

災害対策基本法第40条から45条に、都道府県と市町村は、それぞれの地域防災計画を定めるという規定がある。各自治体の長は、それぞれの防災会議(中小自治体は設置しない)に諮り、防災のための業務などを具体的に定める。そして、「毎年市町村(都道府県も)地域防災計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならない」とされる。関係自治体が地域防災計画に原子力防災対策に関する修正を加えるのは、「必要があると認めるとき」に該当するため。

国は関係地方公共団体に対して、改正原子力災害対策特別措置法の施行後、半年程度の経過措置期間内に地域防災計画(原子力編)の修正をすることを求めていた。このため2013年3月18日がめどとなっていた。
都道府県や比較的大きな自治体は別だが、中小の自治体では数多ある計画書の策定に関しては、外注先として「コンサルタント企業」が関わってくる。一方国は、計画のマニュアルを作成し、防災専門官を市町村に派遣し助言をしている。このため、全国一律の「防災計画」が誕生することになる。その結果は、実質が伴わない机上の作文としての「計画」となる。各自治体の「地域防災計画」の原子力防災の項を、比較・検討することが重要となる。

(2) 原子力規制委員会と「原子力災害対策指針」

福島第一原発の事故の結果を受け、原子力規制委員会は、災害対策基本法と原子力災害対策特別措置法に基づき新たな原子力災害対策指針を示した。前提としての事故は、水素爆発などによって大量の放射性物質が放出した過酷事故というものだ。

「主な項目」

  • 防災対策重点区域(UPZ)を従来の8~10キロ圏から30キロ圏に拡大。
  • 5キロ圏/原発事故が起きた際に直ちに避難する「予防防護措置区域」(PAZ)。
  • 30キロ圏/を事故対策が必要となる「緊急防護措置区域」(UPZ)。
  • 甲状腺被曝(ひばく)を防ぐ安定ヨウ素剤の配布を50キロ圏でも検討
  • オフサイトセンター(OFC)=事故時の対応拠点の改。原発から5~30キロに設置し、30キロ以上離れた場所に複数の代替施設を確保。従来の住民への連絡手段・避難方法・被曝医療体制の確保から、放射能汚染などにも耐えられるよう改修・防災訓練。
  • 未定部分=規制委員会で検討する/国か自治体か予算・住民避難の判断基準。

指針の特徴は防災対策重点区域の拡大であり、21道府県135市町村、対象人口は約480万人となる。実際の汚染領域とは別だが、それでも当事者となる住民と自治体が大幅に増え、原子力防災に関する住民・自治体の発言力が増すことになった。

以上が主たる内容だが、この結果、対象自治体は15道府県45市町村から、21道府県135市町村に拡大、人口は約480万人になる。
これらの自治体が、原子力災害対策を加味した地域防災計画を策定する必要がある。対象とならない自治体は、独自の判断で原子力対策をすることは妨げるものではない。福島第一原発事故の現実から、少なくない圏外の自治体が策定をし、策定を計画している。

(3) 自治体と原子力防災対策

原発30キロ圏内の149道府県・市町村(福島一部除く)を対象に、原子力防災計画に関するアンケートを実施している。(2013年2月22日~3月4日・回答148自治体)。
10の設問の中で、「地域防災計画で残された課題」(特に深刻なものを3つまでを選ぶ)と、「近くの原発の運転再開について」の回答は以下となっている。

◆「地域防災計画で残された課題」

・高齢者など要援護者の避難支援・・59%
・避難の交通手段・・・・・・・・・50%
・ヨウ素剤の対応・・・・・・・・・45%
・避難先の確保・・・・・・・・・・36%   以下略

◆「近くの原発の運転再開をどう考えるか」

・再開を認める・・・・・・・・・・12%
・いずれは再開を認めたい・・・・・35%
・当面、再開を認めない・・・・・・22%
・今後一切、再開を認めない・・・・・6%
・今は判断できない・・・・・・・・25%   以下略

原子力災害に備えた地域防災計画は7月に施行される原発の新安全基準とともに、「安全の両輪」と位置づける重要なものはずだが、現実は、アンケート結果からも知れるように、肝心の避難支援とその交通手段の確保がままならない。原子力規制庁原子力防災課の調査(3月19日)でも、道府県は別として、過半の市町村は策定できていない。日本原子力発電東海第2原発を抱える茨城県では、「原発周辺に約100万人が住むため避難場所の確保が明記できず、18日までに作成できなかった」としている。

これらこともあり、「安全の両輪」がいつのまにかトーンダウンし、策定は再稼働の前提条件にならないと聞こえてくる。
自治体の考えは、「近くの原発の運転再開をどう考えるか」に注目したいが、「当面」「一切」というニュアンスの違いはあるが、計算上「再開を認めない」自治体が50を超えている。立地自治体は別として周辺自治体の真っ当な考えだ。

30キロ圏を越える自治体も動きはじめている。そのひとつとして、柏崎刈羽原発から崎刈羽原発から約80キロに位置する富山県の糸魚川市は、「原子力防災計画」を作成するという。

札幌市でも地域防災計画(原子力災害対策編)を策定している。「泊発電所から放射性物質又は放射線が異常な水準で事業所外へ放出されることにより生ずる原子力災害の防災対策に関し、札幌市、北海道及び防災関係機関が必要な体制を確立するとともに、とるべき措置を定め、総合的かつ計画的な原子力防災事務又は業務の遂行により市民の生命、身体及び財産を原子力災害から保護することを目的」とうものだ。

その主な内容は、「警戒配備」として、情報の収集・連絡、緊急連絡体制及び通信の確保、緊急時モニタリングの実施、市民への的確な情報伝達活動。
「災害対策本部設置」として、活動体制の確立、屋内退避等の防護措置の実施、社会的混乱の防止、飲料水・飲食物の摂取制限等の実施、交通の確保、災害時広聴活動、泊発電所周辺自治体からの避難者の受け入れ・支援。となっている。実効性があるのだろうか。

(4) 再稼働阻止と自治体

「地域防災計画」に組み込む「原子力防災対策」が、7月に施行される原発の新安全基準(最近は安全という定義を変更するようだ)とあわせ、原発の再稼働の条件とされていた。でも、状況が変化している。対象自治体からは、「法律があるので策定するが、防災の具体化は疑わしい」「再稼働を前提とした防災計画ではない」などの声が高まっているからだ。計画の策定が再稼働を後押しするものとならない状態となっている。

地元住民、市民(住民)団体による原発立地自治体と周辺自治体への強い働きかけがあるからだが、なによりも福島第一原発事故の現在進行中の過酷事故の現実が、「原子力防災は事故後の対策は不可能」「再稼働させないことが唯一の原子力防災」ということを理解しているからだろう。

再稼働では腰砕け状態となった関西広域連合でさえ、「福井県の原発事故で琵琶湖(滋賀県)が放射性物質に汚染された場合、近畿地方の住民の四分の三が飲み水を確保するのが困難になる」と明かしている。給水対象人口は350万人となるので、実際の対策は取りようがない。資産家と権力者は別だろうが、放射能入りの水を飲むしか選択肢はない。
やはり基本はカネとなる。電気料金を原資とする数兆円の原発発推進費は、これまでは立地自治体に配られてきた。匿名となる寄付金、稼働することで増える原発の固定資産税なとだ。しかし、原子力防災の対象自治体を増やさざるを得なかったため、これまでカネを配ってこない自治体も原発への発言が可能になった。

政府・電力会社の対応は三つつとなる。ひとつは、原発推進費を配る対象自治体を拡大することだ。でも、現在の財政状況(電力会社も)では難しい。二つは、政府・自治体の意向に反することを主張する自治体へ圧力を強めることだ。その際に重要となるのは、各種補助金・交付金となる。自治体の自主財源は三割程度しかないため、財布の紐を道府県は国が、市町村は国と道府県が握っているためだ。このことは現に実行しており、その枠を広げることは可能だ。最後は、国や県による締め付けができないほど、市町村の声が大きく強くなるのなら、マスメディアを使ってその声を無視することになる。

再稼働阻止の運動のひとつとして、自治体の長と議会への働きかけをつづけたい。道府県の知事の過半は中央官僚の出身者であり、泊原発を抱える高橋はるみ北海道知事は経済産業省の出身だ。これらの知事へのむ働きかけはかなり困難だが、身近な市町村はまだ可能性がある。地域防災計画、特に原子力防災が机上の作文であることを承知しているのは、市町村の長であり、議員であるからだ。政府・電力会社によるカネの圧力に対し、住民の生存・健康ということを対抗軸としたい。

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関連情報

2013年03月15日 原子力防災・自治体アンケート結果(NHKかぶん)
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/149403.html