Author Archives: Wykanri

現代ビジネス 2014年10月21日(火)
核燃料の「最終処分実験」18年の現場ルポ
早急な計画見直しが原発再稼働には不可欠
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40826

奈落に落ちる――。

そんな感覚にとらわれながら高速エレベーターで超深地層の地下300mの世界に降り立った筆者の目の前に、硬い花崗岩の地層をくり抜いた細長いトンネルが現れた。ここは岐阜県瑞浪市。独立行政法人・日本原子力研究開発機構(JAEA)が、“核のゴミ”を処分する場所や方法を探る実験を進める「瑞浪超深地層研究所」の心臓部である。

18年たっても「核のゴミ問題」対策は進まず

誤解されがちなので触れておくが、この研究所には“核のゴミ”は一切持ち込まれていない。最終処分地を選定したり、実際の処分を始めたりする時に備えて、あらかじめ必要になりそうな技術を蓄積している研究所だ。

歳月の流れるは早い。瑞浪市が所有する土地を賃借して瑞浪超深地層研究所が建設され、最終処分に向けた実験を始めたのは1996年のこと。それから早くも18年が過ぎ去った。

問題は、その18年間という時間を無駄にしたことだ。

原子力行政は問題の先送りを続け、具体的な核のゴミの処分策作りが進まなかった。それにもかかわらず、各地の原発は運転を続け、使用済み燃料は溜り続けている。(・・・続きを読む

圧迫感のある閉所で地道な調査と実験は続く

中立機関による「地下水の年代測定」が必要では?

高レベル放射性廃棄物の最終処分策の早期確立を!

「川内原発再稼働反対!同意拒否の宣言を全国から」

 推進勢力による川内原発再稼働に向けた「地元同意」への組織化が住民説明会として本格的にスタートしました。しかしそれはスタートのその地点で住民の拒否に直面し、破綻をさらしています。

 規制委による審査書決定以降、闘いは「審査書」の法令違反=無効・取り消せと、この「地元同意」をめぐる攻防へと軸を移しています。9・28鹿児島全国集会は7500名の参加によって、この攻防に対して地元を軸心にしながら全国の意志と力をもって闘うことを宣しました。

 推進勢力は、「地元同意」を県と市の専権事項とし、住民をそこから疎外することによって「人格権」を踏みに じっています。また「地元」を薩摩川内市に局限し、そこから自ら要避難地域とした30キロ圏の人々を疎外することによって、人々の「人格権」を踏みにじっています。さらに、推進勢力はそのような「地元同意」をあたかも「国民的同意」かの如くに見せかけすり替えることさえ、意図しています。なぜなら、全国の原発再稼働に連なる川内原発再稼働を、このような「地元同意」でもって全国の人々に押し付け、承認を迫ろうとするものだからです。だから今、「地元同意」をめぐる攻防で問われているのは、全国の人々の意志なのだ、と言わねばなりません。

 地元・薩摩川内市では、自治会による同意反対の陳情や、ハガキによる「52円の住民投票」でもって、「地元同意」の問題を市の専権事項から住民全体の意志による自己決定権へと奪い返し、同意拒否として表明する行動へと動き出しています。また周辺地域ではいちき串木野市や日置市をはじめ、30キロ圏9市町のうち5市が「地元」に加えるよう要求しています。

 これに続いて、全国から、「250キロ圏が地元」「全国が地元」という声を上げ、同意拒否!の意志を宣言し、それを川内に、鹿児島に届けよう! この日本列島全体を、川内原発再稼働反対!同意拒否!の声で埋め尽くそう!
川内-鹿児島-全国をひとつの共通の意志でつなげ、表明しよう!
 26日をメインとする全国統一行動で、全国各地でこの宣言を発し、川内の人々と川内市議・川内市長に届けよう。

「もう動かすな原発!福井県民署名」
-安全性の十分でない原子力発電所の再稼働を認めないでください-

福井県の方による署名

福井県外の方による署名

「もう動かすな原発!福井県民署名」ホームページ http://fukui.jpn.org/

明通寺 住職 中嶌哲演さんから 応援メッセージ
http://fukui.jpn.org/archives/massege/m01

福井県民署名サイトs

川内原発再稼働ストップ!
10月23日~30日の1週間を再稼働阻止の全国統一行動週間とし、
各地域における自発的な参加・賛同企画を呼びかけます!
9月28日鹿児島県川内市で開かれた「ストップ川内原発再稼働 全国集会」は、7500人もの人々が結集し、「原発推進」を叫ぶ右翼の妨害をはねのけ、元気に市中デモンストレーションを貫徹しました。
27日夜、各地から駆けつけた100人を超える人々と全国相談会(再稼働阻止全国ネット主催)を持ち、川内原発から始まる再稼働ラッシュを止めるためには、なんとしてもまず、川内原発再稼働をストップさせなければならない。そのために全国の力を、どのように連絡しあい、川内現地の運動にどのように連帯して行くかを集中的に議論し、次の行動を呼びかけることとしました。

川内原発再稼働は許すわけにはいきません。全国統一行動への積極的参加を!

現地・薩摩川内市議会の日程をにらんで、再稼働を決定するな!の声を全国から集中させるため、10月26日(反原子力の日)を中心に、10月23日~30日を川内原発再稼働反対の声をあげる全国統一行動週間とします。

事務局では、この日程に限らず全国各地のさまざまな行動に「再稼働反対」のテーマを組み入れてもらうよう働きかけ、原発を再稼働させない声を全国に広めていきたいと考えています。

<首都圏の行動予定>

【第1弾】 規制委抗議行動
 日時 2014年10月15日(水)12時~13時
 場所 原子力規制庁まえ(港区六本木1丁目9番9号 六本木ファーストビル)
 交通 南北線「六本木一丁目駅」徒歩4分、日比谷線「神谷町駅」徒歩8分
 地図 http://www.nsr.go.jp/nra/map.html
【第2弾】 討論会 川内原発の再稼働阻止を実現するために
 日時 2014年10月15日(水)19時~21時
 参加費 500円
 場所 スペースたんぽぽ(千代田区三崎町2-6-2 ダイナミックビル4F)
 交通 JR水道橋駅 徒歩5分、日比谷線 神谷町駅 徒歩8分
 地図 http://www.tanpoposya.net/main/index.php?id=336
【第3弾】 九州電力まえ抗議 川内原発の再稼働を断念せよ
 日時 2014年10月26日(日)14時~16時
 場所 九州電力 東京支社 有楽町電気ビルヂングまえ
 交通 JR有楽町駅 徒歩1分 (東京都千代田区有楽町1丁目7-1)

 ◆10/26抗議行動レポート(1)

呼びかけ・問合せ 再稼働阻止全国ネットワーク
 TEL 070-6650-5549 メール info@saikadososhinet.sakura.ne.jp

日刊ゲンダイ 2014年10月2日
御嶽山噴火を無視 政府追認する「原子力規制委」の存在意義
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/153804

 川内原発再稼働に突き進む安倍政権。原子力規制委員会は“最後のとりで”との期待もあったが、ダメだった。政府方針の“追認機関”にすぎないことがハッキリした。

 今回の御嶽山の噴火について菅義偉官房長官は、29日の記者会見で「川内原発再稼働への影響を与えないと思う」と早々と宣言。今回の噴火事故を受けて再稼働を見直すことを否定したが、1日の会見で原子力規制委員会の田中俊一委員長も「(今回の噴火が川内原発再稼働に影響を与えるのかについて)再検証するべきことではない」と菅官房長官に同調したのである。

 今回、御嶽山の噴火でわかったのは日本の火山学者の予知・予測のつたなさと、想定をはるかに上回る噴火が起きて、しかも、何の警告も出されていなかったことから多くの犠牲者を出したという事実である。

 日本の火山学者の予知レベル、危機管理態勢の不備など検証すべきことは山ほどある。実際、一部の火山学者からは「地震動が始まっていたのに登山者に警告を発したり、登山自粛を求めなかったのは問題だった。地元観光業への打撃を気にしすぎたのではないか」という声が上がっている。

「現象が全然違う」

 そこで田中委員長に、「日本の火山学者は国際レベルに達しているのか、危機管理態勢が整っているかも含めて再検証するべきではないか」と聞いてみたのだが、その答えにはガックシだ。

「火山学者のレベルについて私が申し上げる資格もないし、知識もありませんし、<社会的対応がどうこう>というべきことではない。御嶽山の水蒸気爆発による噴火と、(川内原発で問題になっている)超巨大噴火は、起こる現象が全然違う」とか言って、見直すそぶりもないのである。

 異なる噴火現象といっても、同じ日本の火山学者の知見を基に予測や対応を考えているのだから、その学者が信用できなければ、議論の前提が崩れてしまう。まして、議論しているのは原発の安全性や避難計画なのである。国内外の専門家や危機管理のエキスパートに相談すらしないのは異常に見える。

 政府の言い分にお墨付きを与えるだけの規制委であれば必要ないし、田中委員長の適性も問われる。

(取材協力=ジャーナリスト・横田一)

2014年9月27日~28日、鹿児島市内で開かれた「ストップ川内原発再稼働!鹿児島行動」参加者からのレポートを紹介します。

新田秀樹(ピースリンク広島)

27日(土)、28日(日)の2日間、薩摩川内市、鹿児島市での現地行動に広島から6人が参加し、28日の集会は総勢で15人が参加した。

27日は川内市文化ホール会議室で全国相談会。16時から約4時間の長丁場。6回目ぐらいの開催だそうだが初めて参加した。原発立地現地の団体を中心に120名。緊迫してきた状況に具体的にどう運動を作っていくか、真剣に討論してあっという間の4時間だった印象だ。

現地鹿児島からの報告では、かごしま反原連のメンバーから火山の問題が話され、川内原発は5つのカルデラに囲まれた最悪の立地で、建設当時は全く九電自身も全く考えていなくて、90年代から火山学会で検討されている。イメージ的には桜島を囲む錦江湾自体がカルデラであり、海底爆発を含む巨大噴火の可能性もあり、規制委自体もあえて無視している状況。

規制委が正式に「基準を満たしている」と発表(9月10日)後のこれから、住民説明会、市議会、県議会と続く。これらに対する対策をどうするかが一つの焦点。

今後の動きは、10月9日の薩摩川内市の住民説明会は1200人の会場に駆け込みで推進派が組織動員して、1300人ほどになり抽選会が行われる。10日、13日、14日、15日と各地で行われるが、応募者が少なく募集が延長された。

そのうちの13日、いちき串木野市での説明会は一つのポイント。ここは30キロ圏であるが、同意の対象の「地元」とされていない。人口約3万人に対し15400余の署名を集め、反対の立場をとっている。

住民説明会自体は一方的に90分話して、30分しかない質問時間。再稼働問題の危険の真実は明らかにはならない。大飯再稼働(2012年)の時に、「もう一つの住民説明会」をひらき、それが一つの力になった。時間はないが、川内でも協力して開催できないか。

市議会は、15日以降、原発特別委員会採決、臨時議会招集へと動く。当初から11月上旬に人事のための臨時議会を予定している。それまでに決めたいはずだ。その後、県議会。県は「現地が賛成している」立場をとる可能性が高い。

全国的な取り組みとしてまず、統一行動を追求しようとした。具体的には、10月26日は日曜日でもあり、「反原子力の日」行動を企画している所もある。時期的にもよく、全国で「川内原発反対行動」を取り組もうと決めた。
最短で年明け早々と言われる再稼働に対して、12月にも再度全国集会を企画検討することが決められた。

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28日朝はゲート前行動に参加した。昨日からの参加者に加え、当日来た人、とりわけ大阪釜ヶ崎からもバスで合流して、200人ほどの行動になった。

リレートークの後、申し入れ書を10団体ぐらいから渡した。持参した上関ネットとピースリンクの申し入れ書も手渡した。大分の知人が遅れて来て、一人でも申し入れ書を渡すと言うので私たちも同行した。30分粘って交渉して、しぶしぶ総務課長が出てきた。

同日午後、鹿児島市内の繁華街にある天文館公園で、「GOODBYE NUKES ストップ 川内原発再稼働!9・28全国集会」が行われた。公式発表で7500人。事実上、陸続きの日本最南端の町では、過去最大規模の集会になった。
私たち6人とは別に、東部から3人、その他自発的に6人が来ていた。とりわけ呉のピースリンクのメンバーでもある2人はピースリンクののぼり旗を見てきたと合流できた。

集会後はデモへ。県外の遠くから最後が地元鹿児島とへと続く。私たちは主催者グループの後の首都圏反原発連合のグループとともにデモ隊を組み、「再稼働反対」を市民に訴えた。

人口60万ぐらいの鹿児島市では反応はよくわからないが、それなりに関心は高かったと思う。桜島の降灰で有名な鹿児島市だが、この日は幸い、降灰もなく、良かったが、南国でもあり暑かった。

(たんぽぽ舎メルマガ TMM:No2295 より)
2014年9月27日~28日、鹿児島市内で開かれた「ストップ川内原発再稼働!鹿児島行動」参加者からのレポートを紹介します。

今回の御嶽山の噴火は 原発再稼働に対して
地球生命体から念を押した警鐘のように思われた

水尾寛己(たんぽぽ舎会員)

川内原発の再稼働を阻止するために、9月28日午後に全国集会、デモが天文館公園で行われた。前日の27日午後4時からは、再稼働阻止全国ネットワークの全国相談会が100余名の出席のもと行われた。相談会では、基調提起、現地情勢報告、招待発言、各地報告などがあった。会場は全国リレーアクションによって集まった熱き「寄せ書き横断幕」で囲まれ、活気ある発言が続いた。

 今後の方針では、特に川内原発の再稼働を許さないための山場の行動日について議論になり、まずは川内市議会での再稼働決定の阻止が差し迫った課題で、住民説明会後の市会の動向、それに対する現場の意見・対応を調整した結果、10月26日に山場の集会を設定することになり、全国からもそれに向けて支援することを決定した。

 川内原発再稼働阻止のための具体的行動として、川内市民を代表に各自治体の議員からなる川内市会への請願書提出計画、反原連と地元による脱原発チラシの川内市民8万人ポスティング計画、ハガキによる反対・賛成アンケート、集会での放射能による牛の奇病の公開などマスコミ対策など効果的な行動についての追加意見があった。また、川内原発の近くの国有地に6番目のテントが設置されているとの報告もあった。

9月28日午前中はバス2台と乗用車で川内原発ゲート前に200名が集合し、再稼働反対のシュプレヒコール、九州電力への申し入れを行ってきた。その後、相談会で報告のあったテントを見学した。川内原発の天井が見える丘と海が見える、広々した砂原の大地の上にトイレテントと3種類のテントが設置されており、頼もしく感じられた。午後は天文館公園で集会・デモがあり、7,500人の熱気で市民へアピールした。

2日間参加しての感想を述べると、まず、地元の参加者が真剣になっていることを強く感じた。しかし、多くの川内市民に「放射能の恐ろしさ、福島の被害の真実」を知らされていないのでないか、火山噴火を伴う原発事故が起きた場合に「避難ができなく放射能に汚染される」「大地、水、植物、動物は放射能に汚染され、永年、居住地を失ってしまう」ことを理解されていないのでは、と思った。

九電による安全神話とマスコミの「原発の危険性についての情報提供不足」によるところが多く、マスコミに強くしつこく協力を求めていく必要がある。また、マスコミが頼りにならない中で、脱原発ちらしの川内市民へのポスティングが、原発再稼働阻止についての市民の理解を広げることを期待したい。

また、27日の相談会の途中で緊急報告のあった御嶽山噴火は、火山の専門家が言っていた「噴火の予知はムリ」であることを直に証明してくれたと言える。福島第一原発事故は首都圏手前での事故であったし、今回の御嶽山の噴火は、原発再稼働に対して、地球生命体から私たち日本人への念をおした警鐘のように思われた。

地震学者の石橋克彦氏が告発していた「川内原発再稼働の審査書決定は無効」との理由が現実に証明されたと言える。川内市会議員、鹿児島県会議員、国会議員の方々は、市民、県民、国民それぞれの代表者であるならば、「今回の御嶽山噴火を再稼働に対する自然からの警告」と受け止めて、目を覚まして頂きたいと思う。

 そうして、日本を滅ぼすリスクを放置する鈍感な安倍晋三の原発再稼働にストップをかける役割を果たして頂きたいと願う。

「川内原発再稼働阻止現地行動」報告               (事務局 木村(雅))

27日夕方「再稼働阻止全国ネットワーク全国相談会」
薩摩川内、鹿児島の方々とともに志賀・伊方・大間など原発現地の方と東京から駆けつけた120名ほどで、いかに川内原発再稼働を止めるかを話し合った。
鎌田慧さん、広瀬隆さんも白熱論議に加わり、薩摩川内市やいちき串木野市で行われる住民説明会や当面の薩摩川内市議会のスケジュールについて、地元からの報告を受け、次の大きな行動を10月26日を軸に実施することを決定した。会議中(27日夜)に飛び込んできた御岳山噴火の報は、桜島の噴煙とともに、川内原発の再稼働を目論む人間を、自然が嘲笑っているように感じさせた。

28日午前「川内原発ゲートまえ抗議行動」
早朝に薩摩川内のホテルから貸切バス2台で川内原発ゲート前に移動、ものものしい警備をものともせず、ゲート前に約200名が集まり、川内・鹿児島・東京の主催5団体、原発立地9団体のアピールとともに、「川内原発再稼働反対」のシュプレヒコールをあげ、抗議・申入書を九電職員に手交した。

28日午後「ストップ川内原発再稼働!9.28全国集会」
午後から鹿児島市天文館公園に移動し、30度近くの暑さの中、リレーアクションで集められた50枚の寄せ書き・バナー・横断幕を会場に掲示した。九州各地、全国各地から7500名が集まり、各地からからのアピールを聞き、川内原発廃炉を確認した。沢山のメディアのテレビカメラやスティルカメラに追われながらにぎやかな通りを沢山の人々と共にゆっくりと歩いた。「安全、安い、電気が足りない」の大嘘が誰の眼にも明らかになった今、必至で再稼働を目論んでいる推進側が非常に厳しい状況に置かれていることを実感した。

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河北新報 2014年09月27日土曜日
規制委発足2年/理念実現に向け原点に返れ
http://www.kahoku.co.jp/editorial/20140927_01.html

 原発の再稼働に向けた技術的な審査だけを求められているわけではない。それも重要な業務に違いないが、国民が期待したのは、原子力に対する確かな規制を通じ、人と環境を守るという理念の実現だったはずだ。

 原子力規制委員会が19日で発足2年を迎えた。
 前身の原子力安全・保安院が、「電力事業者のとりこになった」(国会事故調査委員会)反省から、規制機関としての独立性や専門性、中立性や透明性を掲げて設置された組織である。
 昨年6月には、原発の再稼働に必要となる新たな規制基準を策定。大規模災害やテロなどの過酷事故に対し、「世界一厳しい」(田中俊一委員長)ハードルを設けた。事業者と規制行政の担当者が公開の場で議論する審査会の形式は評価できよう。

 見解が対立する事業者に次々と追加データを求めたり、原発立地自治体の長や政治家との面会を避けたりする規制委の姿勢を、原発推進側は「独立性を重視するあまり、孤立、独善に陥っている」と痛烈に批判する。だがそれも、規制委が組織の成り立ちを意識した運営に注力してきた証しとも取れる。

 一方で、福島第1原発の廃炉作業を監視する立場でありながら、汚染水問題への対応が後手に回るなど、原発再稼働に向けたハード面の検証以外で存在感を十分発揮したとは言い難い。

 福島第1原発の事故で分かったのは、一度コントロールが外れれば手に負えなくなる原発の恐ろしさだ。事故が起こる前提に立った事故収束対応や、警察、自衛隊等との連携、緻密なデータに基づく被ばく住民の避難誘導や支援体制の整備など、幅広い安心・安全の方向付けにおいても、規制委の指導力が求められる。人材育成を柱とした原子力規制庁の体制強化と併せ、今後の課題だろう。

 規制委は10日、九州電力川内原発に対し、初めて新基準への適合を認定した。しかし、米国では稼働の条件になっている周辺住民の避難計画については審査対象になっていない。法にのっとった対応とはいえ、避難基準の指針を示しただけで、具体的な計画づくりは自治体任せというのは無責任ではないか。
 政府が自治体の避難計画作成への関与を強めたとはいえ、実効性が担保されたことにはならない。住民の不安を緩和し新基準への信頼感を増すためにも、政府は避難計画の整備を規制委の審査項目に加えるべきだ。

 規制委の発足2年に合わせ、委員人事が行われた。原発推進の立場を取る元日本原子力学会長の就任と、活断層調査で事業者に厳しい立場を貫いてきた委員の退任だ。政府や電力事業者の意向に沿った人事といえ、規制委の存立基盤を揺るがしかねない。今後、原発再稼働に向けた審査の加速化を求める圧力が強まることも予想される。

 規制委に求められるのは、原子力安全規制のプロとしての自覚と誇りだ。なお続く福島第1原発事故の惨状を踏まえ、いま一度原点に立ち返ってほしい。

(週刊朝日 2014年10月03日号配信掲載)(2014年9月24日(水)配信 nifty news)

「原発震災」を予言した地震学者 石橋克彦氏が告発
「川内原発再稼働の審査書決定は無効だ!」
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20140924-02/1.htm

九州電力の川内原発(鹿児島県)が再稼働に向けて急ピッチで動き始めた。審査書を原子力規制委員会が正式決定し、政府は再稼働を進めるという文書を交付した。だが、「原発震災」を早くから警告してきた地震学者の石橋克彦・神戸大学名誉教授は、審査書は無効だと訴える。

 これまで川内原発の審査書に対する批判は、火山噴火が軽視されているとか、避難計画が不十分であるとかが大半でした。しかし、地震に関して重大なことが見過ごされています。

 福島原発事故の反省に立って原子力規制行政が抜本的に改められ、国民の不安と不信を払拭(ふっしょく)すべく新規制基準が作られたはずです。全国初となる川内原発の審査書は、その試金石です。

 ところが、新基準自体の欠陥は脇に置くとしても、新基準のもとで規制委員会がきちんと審査したかというと、実はそれが驚くほどいい加減なのです。

 九州電力の申請書は9月10日、規制委員会によって「新規制基準に適合する」と認められた。12日には政府が再稼働を進めることを明記した文書を、上田隆之・資源エネルギー庁長官が鹿児島県の伊藤祐一郎知事と同県薩摩川内市の岩切秀雄市長に手渡した。政府のお墨付きを得たことで、九電は再稼働に向けた準備を着々と進めていくことになる。

 だが、石橋氏は月刊誌「科学」9月号に、そもそもの審査がおかしいと批判する論文を発表した。どういうことなのか。

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 一言でいうならば、耐震設計の基準とする揺れ=「基準地震動」を策定する手続きが規則で決められているのに、それを飛ばしているのです。これは基準地震動の過小評価につながり、法令違反とさえ言えます。

 原発の安全上重要な施設は、基準地震動に対して無事であることが求められています。そのため、「内陸地殻内地震」「プレート間地震」「海洋プレート内地震」について、敷地に大きな影響を与えると予想される地震を複数選び、それらによる地震動を検討することになっています。

 しかし九電は、活断層による内陸地殻内地震しか検討しませんでした。プレート間地震と海洋プレート内地震については、揺れは震度5弱に達せず、原発に大きな影響を与えないとして無視したのです。

 実は、けっしてそうは言い切れません。地震学的に、具体的な懸念があるのです。ところが審査では、九電の言いなりにしてしまった。

 プレート間地震については、社会問題にもなっているように、内閣府の中央防災会議が駿河湾~日向灘にマグニチュード(M)9級の南海トラフ巨大地震を想定しています。そこでは、川内付近の予想最大震度は5弱に達しています。

 しかも、これは全体の傾向をみるための目安にすぎないので、特定地点の揺れは別途検討するように言われています。震源のモデルを安全側に想定すれば、川内では震度6になるかもしれません。

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 海洋プレート内地震については、九州内陸のやや深いところで発生する「スラブ内地震」が重要です。「スラブ」というのは、地下深部に沈み込んだ海洋プレートのことです。

 1909年に宮崎県西部の深さ約150キロで推定M7.6のスラブ内地震が起こり、宮崎、鹿児島、大分、佐賀で震度5を記録して各地に被害が生じました。

 スラブは鹿児島県の地下にも存在しますから、もっと川内に近いところのスラブ内大地震を想定すべきです。そうすれば川内原発は震度6程度の揺れを受ける恐れもあります。

 基準地震動は1万~10万年に1度くらいしか起きない地震を想定すべきものです。だからプレート間巨大地震とスラブ内大地震も検討する必要があるのに、九電も審査側も、規則を無視して「手抜き」をした。

 九電は、内陸地殻内地震による基準地震動については、原発から少し離れた活断層で起こるM7.2~7.5の地震を想定して、最大加速度540ガル(加速度の単位)としました。

 南海トラフ巨大地震とスラブ内地震では、この値を超えるかもしれません。前者については、九電は免震重要棟のために長周期地震動をいちおう検討しましたが、内閣府の震源モデルの一部をつまみ食いしただけの不十分なものです。

 仮に最大加速度が540ガルより小さかったとしても、プレート間地震とスラブ内地震は活断層地震とは非常に違った揺れ方をするので、基準地震動を策定して重要施設の耐震安全性をチェックすべきです。

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杜撰審査続けば 再び原発震災も

 川内原発の基準地震動は620ガルとよく言われますが、これは直下で震源不詳のM6.1の地震が起きた場合の想定最大加速度です。しかし、活断層がなくてもM7程度までの大地震は起こりうるので、これは明らかに過小評価です。

 2007年新潟県中越沖地震(M6.8)では東京電力柏崎刈羽原発の1号機の岩盤で1699ガルを記録しました。地震の想定と地震動の計算の不確かさを考えれば、最低その程度の基準地震動にすべきです。

 しかし、そういう技術的な話とは別に、規則に定められた手続きを飛ばしたのは、「耐震偽装」ともいえる大問題でしょう。

 川内原発の審査書を決定する前に、規制委員会は7~8月に審査書案への意見(パブリックコメント)を募った。その結果、全国から1万7千件余りの意見が寄せられた。

 実は石橋氏も、前述のような意見を提出して、審査に過誤があり結果的に規則に違反していると指摘した。だが規制委員会が公表した文書では、この意見に対する回答として〈申請者は、プレート間地震及び海洋プレート内地震については、(中略)敷地に大きな影響を与える地震ではないと考えられることから、検討用地震として選定していません〉という「考え方」が示されただけだ。

 石橋氏は憤る。

● ● ●
これでは規制委員会は九電の代弁者にすぎません。まるで“子供の使い”です。審査メンバーに地震がわかっていて真剣に考える人がいないか、再稼働路線に屈服したかでしょう。

 石橋氏といえば、東大助手だった76年に東海地震の可能性を指摘し、社会現象にもなった。97年からは「原発震災」という言葉を使って大地震による原発事故の危険性を訴え続け、11年の東日本大震災でその正しさが図らずも実証された。

 その石橋氏が、今はこう警告する。

 これほど杜撰(ずさん)な審査なのですから、無効にしてやり直すべきです。これが前例になって手抜き審査が続けば、第二の原発震災を招きかねません。

構成 本誌・藤村かおり

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いしばし・かつひこ 1944年生まれ。神戸大学名誉教授。専門は地震学、歴史地震学。『大地動乱の時代─地震学者は警告する』『原発震災─警鐘の軌跡』など著書多数。近著は『南海トラフ巨大地震』(岩波書店)。