【地域の活動紹介】

5月16日開催の鹿児島県薩摩川内市議会・原発特別委員会(※1)に、参考人として九州電力が招致されました。休憩無し全3時間の内容を報告します。

【 概 略 】

市議会にはすでに、原発再稼動などに関わる陳情(※2)が提出されており、16日に行われた特別委員会には副社長・山元氏以下4名が出席し、参考人招致という形式で九州電力からの説明と委員による質疑が行われました。

質疑の最大のポイントは、基準地震動(※3)を620ガルに改正(この数値を原子力規制委に報告)しながら、それに対応する「建屋、機器の据え付け部、機器自体、そして配管の詳細設計がまったく着手されていない」、という証言が明らかにされたことです。現在はまだ、機器類のコンピュータ・シミュレーションの段階で、それが終わってから、設計のやり直し、改造・新設という段取りです。当然、補正申請書の提出と、その承認という手続きが必要です。

九電は、津波と火災の対策工事でお茶を濁し、「6月末に工事終了」と嘯(うそぶ)いてきました。しかしその背後に、地震対策工事の問題が隠れていたわけです。

地震による配管破断こそ、福島原発事故の真の原因とも言われています。基準地震動の数字だけを操作し、実際の対策のめどは立っていない、ということが明らかになった証言でした。さらにこれが、再稼働が9月どころか10月に延びる、と言われる真因でもありました。

質問に対する答弁は、山元副社長が対策全般について説明し、部長ら他3名が適合性審査の状況、地震・津波・火山対策などの技術的な内容と電力需給を担当していました。


【 質疑応答 】

【山元副社長の冒頭発言】

  1. 燃料費負担増が6,000億円(昨年度)に上っており、川内原発だけでも再稼働したい。
  2. 規制委員会対応には200人体制。
    規制委によるヒアリングはのべ368回に上る。安全性・信頼性対策を強めている。
  3. 原発停止により、この夏の電力需給が厳しい。

【適合性審査の状況について報告(T部長)】

  1. 初の申請書は、安全対策の基本設計思想のレベルで、4月末に補正書を提出したが、27件42項目の不備を指摘された。ただし内容は、「添付」とした資料を「本文」に入れる等の指示、事務的な問題が多い。
  2. 書類は当初、1800ページ程度だったが、7700ページに増え、最終的には1万ページを越す見込み。
  3. 火災・津波などの工事計画(+運転管理体制)の認可を受け、その後、(審査書完成)→使用前検査→(同意取得)→再稼働という手順。現在進行中の(火災・津波関係の)工事は、6月末までに終了させたい。
(ここで地震対策の工事について触れていないことに注意。
質疑応答を参照)

【地震・津波対策の対応について報告(K部長)】

  1. 基準地震動の620ガルへの引き上げは、2004年の北海道の地震「M5.7」(注1)をベースとして決めた。
    (注1:2004年12月14日 留萌(るもい)支庁南部地震、公式な記録では「最大震度5強・地震の規模M6.1」)
  2. ##キロ長の断層による地震・津波を想定し、海水ポンプ位置を4mから5mにかさ上げ。引き波による冷却水不足対策として、貯水池も作った。

【電力需給について】(質疑の後半を参照)

【質疑応答】・・・のべ8人の質問、1件の要望

佃委員の質問
1.「基準地震動=620ガルに対応する対策内容は具体的に何か?」 
2. 「福島では配管の破損が事故原因だと思うが、ストレステスト以降、補強は行ったのか?」

回答1. 『もともと川内原発は1000ガルに耐える基本設計になっていた。』
回答2. 『地震の周波数帯により破損が起こる部位は違う。低周波で建屋、高周波で機器が壊れる。まず岩盤・地盤の振動を入力値とし、建屋、機器の据え付け部、機器、そして配管の破損が起こるか否か、コンピュータ・シミュレーションを行っている段階。(三菱電機と大成建設が担当)』
回答3. 『シミュレーションに時間がかかる。その上で個々の要素別に詳細設計を行い、対策を立案、補正書を出す。承認の上、地震対策の工事を行うことになる。従って対策は未実施。』

井上委員の質問
1. 「火山噴火の予知は可能か? 予知できたとして燃料搬出にかかる時間は?
2. 新燃岳のような予期せぬ噴火もあるのではないか?」

回答1. 『九州の火山は39、川内原発にからむ可能性があるのは14。そのうち5つのカルデラのモニターを行う予定。規制委員会との間でガイドラインを作成する。』
回答2. 『川内原発に火砕流が到達するようなカルデラ噴火は、「数10年前」に判る。新燃岳のような「小規模」な噴火は予知困難だが、火砕流は川内に到達しない。』
回答3. 『カルデラ噴火が予知できた場合、燃料(2,000体)は「早め」に搬出する。搬出先は言えない。』

上野委員の質問
1. 「原子力は国策(ベースロード電源)、川内原発は30年。川内原発がトップバッターとなったのは、安全対策が評価されたからではないか?」

回答1. 『30年以上、川内原発は安全に運転されてきた。さらに3年以上かけて安全対策を打ってきた。この対策案が良いと思っても、規制基準にそって「証拠」が明確な対策案を受け入れてきた。』

井上委員の質問
1. 「原発から800mの活断層をなぜ評価しないのか?九電の活断層の定義は何か?」

回答1. 『活断層の定義は12~13万年前以降、動いているということ。敷地内外の断層を調査してきたが、問題ある断層はない。』

福元委員の質問
1. 「新聞によると「夏の再稼働は困難」とのことだが、事実か?」
2. 「公聴会の時期はどうなるか?」

回答1. 『夏の再稼働は困難」ということは事実である。』
回答2. 『5月末に補正書を提出→審査書案の作成→1カ月のパブコメ→審査書作成の後になる。』

川添委員の質問
1. 「補正書は、規制委員会とすりあわせた上、「成案」として出すのか? 」
2. 「鹿児島県北西部地震で原発内は数10ガルだったのではないか?」
(注:九電データでは64ガル。気象庁は444ガル)

回答1. 『その通り』
回答2. 『近い震源の地震を考慮して620ガルに上げた。』

佃委員の要望
 「火山噴火前、燃料をどこに輸送するのか公表して欲しい。」

A委員の質問
1. 「この夏の電力需給はどうなるか?」

回答1. 『昨年の猛暑に比べ平年並みの予想なので、1,575万KWの予想。他電力からの買電をふくめ3%の余裕率を見込むが、政府からはもっと余裕を持つよう指導されている。』 『買電は単価が高く(50円/KW?)、経営を圧迫している。』

井上委員の質問
1. 「原子力発電がなくても電気は足りているのではないか?」 
2. 「発電エネルギーのリミックスを計るべきではないか?」

回答1. 『余裕率が少なく、買電の負担が大きい』
回答2. 『リミックスは検討する。しかし天然ガス価格は石油に連動しており、エネルギーセキュリティの点でも原子力を活用したい。』

九電Y部長から補足説明
『原発近くの「活断層」の指摘があったが、活断層でないとの判断であり、4月18日の報告で規制委員会も了解した。』

【終了】


※1 薩摩川内市 市議会 川内原子力発電所対策調査特別委員会
 過去の開催記録 http://www.city.satsumasendai.lg.jp/www/contents/1385598209471/index.html
 委員名簿 http://www.city.satsumasendai.lg.jp/www/contents/1352866607941/files/20130924.pdf

※2 薩摩川内市 平成25年度請願・陳情 一覧
http://www.city.satsumasendai.lg.jp/www/contents/1373421934377/index.html
川内原発再稼働に「反対する」陳情は10件(陳情第6号、陳情第7号、陳情第8号、陳情第9号、陳情第10号、陳情第11号、陳情第12号、陳情第13号、陳情第14号、陳情第15号)で、もう1件は、早期に再稼働を求める推進派からの陳情。いずれも「継続審議」として今年度に持ちこされたもの。

※3 「基準地振動」 読み:きじゅんち しんどう。 原発の設計の前提となる地震の揺れを示す値、単位はガル。
原発周辺の活断層などで起こりうる大地震を想定して、地盤の状態を加味し、原発直下の最大の揺れを見積もる。これをもとに原子炉、建屋、配管などの構造や強度を決める。

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