脱炭素を目指す政府の「GX実現に向けた基本方針」に原発の60年超運転が盛り込まれたことで、今国会(第211回常会)への法案提出期限がせまっているなどを理由に、重要案件であるにもかかわらず反対意見を無視し多数決で議論を終わらせた原子力規制委員会に対し、2月13日、抗議申入れを行いました。
抗議申し入れ書(PDF)
(再稼働阻止全国ネット・原子力規制委毎週水曜昼休み抗議行動 連名)
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2月13日夜に開かれた原子力規制委・臨時会議は、通常の会議で「反対意見」を述べた委員があり、言うなれば、その委員をやりこめるために急きょ開催されたもの。反対する委員に対し委員長は「誤解している」「平行線だ」と述べるばかりで、「(政府から)急かされているから早急に決めなければならない」といいながら、強行採決した。
会議の中で委員長の発言に「現時点で、60年までは十分に評価できている。その次の期間も、ある程度は担保できる」とあったが、「十分な評価」や「ある程度の担保」がそうも簡単に言い切れるのであれば、再稼働審査など必要ないし、規制委員会の存在意義も無いに等しい。
原子炉(金属材料)は年数が経過するほど劣化が進むことは物理法則であり、政府の意向で止まってくれるものではない。老朽化した原発が再稼働後に相次いで停止事故を起こしているさなか、「お墨付き」を与えた原子力規制委が「運転期間撤廃」を宣言した、というのが今回の出来事である。
再稼働審査では「新しい知見」に目を向けていたはずの規制委が、いまは、「科学的根拠は不要で、政府に追随するのみ」という有り様だ。
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「原発60年超運転」に関する報道
東京新聞 2023年2月15日
「厳格に審査するほど運転期間が延びる」原発60年超運転を認める政府方針が抱える矛盾
東京新聞 2023年2月15日
<発言詳報>原発運転60年超を容認した規制委で、各委員は何を語ったのか
反対意見を出した委員の発言の一部
「(事業者側に)不備があって審査を中断した場合も運転期間が延びる。事業者の責任でそういうことになっても、延ばしていいよというのは非常におかしい。そういう制度になるならば、審査をしている側として耐えられない」
「炉規法は規制委が守るべき法律だ。科学的、技術的な理由、より安全側に変える理由ならば変えることにやぶさかではないが、今回はそのどちらでもない。」
東京新聞 2023年2月16日
<社説>原発60年超容認 規制委の独立性を疑う
社説からの引用
福島第一原発事故以前の原子力規制は、原発を推進する経済産業省が所管していた。原子力規制委は事故の反省の上に立ち、「規制と推進の分離」を図って設立された、その名の通り「規制」のための独立機関であるはずだ。 その規制委が経産省主導の推進策に寄り添い、事故の教訓を踏まえて定めた原発の運転寿命を覆すというのは3・11以前への逆戻りだ。
朝日新聞デジタル 2023年2月16日
(社説)原子力規制委 存在意義の根幹揺らぐ
高知新聞 2023.02.17
社説 【原子力規制委】独立性に疑念が膨らむ
社説からの引用
規制と推進の双方を経産省が担うゆがんだ構造が事故を防げなかった背景として批判され、独立性をうたった規制委が発足した。その経緯からいって、主体的な判断は規制委の生命線だったはずだ。(中略)今回の制度見直しでは、事務局の原子力規制庁と経産省が非公式に面談を繰り返していたことが内部通報で発覚。資料もほとんど黒塗りで公開した。透明性を欠いた関係が疑念を生むのはやむを得まい。