Category Archives: 論説・論考

沖縄タイムス 2014年6月2日 05:30

社説 原子力規制委人事案 独立性に疑問符が付く
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=71467
安倍政権が示した原子力規制委員会委員の国会同意人事案が波紋を広げている。
 一言で言えば、厳格な審査を担ってきた委員を退かせ、原発推進派の人材を新たに委員に加えるものだ。原発の再稼働に向けた布石としか思えない。
 原子力規制委は、東京電力福島第1原発事故の反省から、高い独立性をうたって発足した組織である。推進派の起用によって中立性は保たれるのか、甚だ疑問である。

 2委員が9月に任期満了を迎えるのに伴い政府が提示した人事案は、原発の地震対策で厳格な姿勢を貫く島崎邦彦委員長代理らを再任せず、後任に元日本原子力学会会長の田中知(さとる)東京大教授らを充てるというもの。
 田中氏は経済産業省審議会委員を務めるなど、原発の利用に積極的だ。福島原発事故後の2011年11月に開かれた経産省総合資源エネルギー調査会の会合では「脱原発」に踏み出すべきだとする委員らの中にあって、田中氏は「原発の安全性は確保できる」と主張した。

 原子力規制委員の人選に関しては民主党政権時に、原子力関連団体からの一定の報酬を受けた人物を除外する基準を定めている。

 ところが田中氏は、東京電力の関連団体の東電記念財団から50万円以上の報酬を受け取っている。原子力規制庁は「同財団は、関連団体に当たらない」というが、言い逃れにしか聞こえない。厳格な人選基準がなし崩しにされれば、規制委の独立性が骨抜きにされかねない。

    ■    ■

 島崎氏は地震学が専門の研究者。原発敷地内の断層調査や地震、津波対策の審査を担ってきた。日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の原子炉直下の断層を「活断層」と認定。同原発は廃炉を余儀なくされる可能性が出てきた。関西電力大飯原発3、4号機(同)の審査では、耐震設計の目安となる基準地震動の見直しを迫り、同原発の再稼働が大幅に遠のいた。
 こういった島崎氏の厳格な審査姿勢に対し、自民党内からは、再稼働の前提となる安全審査を長引かせる要因となる-と交代を求める声が出ていた。

 原子力規制委は、経産省にあった規制部門の原子力安全・保安院を分離して組織された。規制する側と規制される側を明確に分け、本来の監視・監督機能を強化するためだ。安全審査が緩むようなことがあれば、組織の存在意義にかかわる。

    ■    ■

 福井地裁は先月、大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じる判決を出した。共同通信の4月の世論調査では原発再稼働を進める政府のエネルギー基本計画を約54%が「評価しない」と答えている。
 超党派の国会議員でつくる「原発ゼロの会」は人事案の撤回を求めている。

 安倍晋三首相は自身の意向が強く働いた人事によって、政策を強行する手法が目立っている。原子力政策でこのやり方を押し通すことは、国民の原発への不信を増大させることになるだろう。この人事案では筋が通らない。

現代ビジネス 2014年05月16日(金)川口マーン惠美「シュトゥットガルト通信」
脱原発で追い詰められるドイツ政府と電力大手が「バッドバンク」設立の秘密計画!?

ドイツを駆け巡るシュピーゲル誌の特ダネ

5月12日発売のシュピーゲル誌で、特ダネがあった。見出しは『原子力のためのバッドバンク』。バッドバンクとは、金融機関が抱える不良資産を買い取り、管理・処分する機関である。金融機関から不良資産を切り離すことにより、損失拡大を食い止め、財務状況を改善し、金融システムを健全化することが目的だ。

では、シュピーゲル誌のすっぱ抜いた『原子力のためのバッドバンク』とは何かというと、E.on、RWE、EnBWの大手電力会社3社(ドイツには電力会社は4社あり、残りの1社は外国資本)とドイツ政府の間で、バッドバンクのような機関を設立しようとする秘密計画が進められているというのだ。この場合の不良資産とは、電力会社の原発部門である。

具体的には、「電力会社から原発部門を買い取って、脱原発の後始末をする機関(バッドバンク)を作る。これは、基本的に国営。電力会社は・・・(続きを読む)

絶望的な状況にある火力発電

国民にツケが回ってくることは避けられない

電力会社よりバッドバンクの方がマシ?

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著者: 川口マーン惠美
住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち
(講談社プラスアルファ新書、税込み880円)

President Online(PRESIDENT 2014年5月19日号)2014年5月6日(火)

原発ゼロ白紙でも老朽炉の「廃炉」検討が視野に
http://president.jp/articles/-/12462
政府は、中長期のエネルギー政策の指針とする「エネルギー基本計画」を、4月11日の閣議で決定した。民主党政権が掲げた「原発ゼロ」を白紙撤回し、原子力発電を安定した電力を供給できる「重要なベースロード電源」と位置付け、国内48基がすべて停止中の原発の再稼働にゴーサインを出した。しかし、再稼働を急ぎたい電力各社はそれとは裏腹に、再稼働に巨額資金を要する老朽炉について、廃炉の検討も同時に視野に入れ出した。法律で定める原則40年の運転期限に近づく30年超の老朽炉は16基と3分の1を占めており、老朽炉問題は、政府が基本計画で総発電量に占める原発の構成比の目標値を見送らざるをえなかった「不都合な真実」にも映る。(続きを読む)

Reuters 2014年 05月 1日 16:36 JST
焦点:フランスに迫る「原子力の崖」と「投資の壁」

[パリ 30日 ロイター] – フランスは今後数年以内に原子力中心のエネルギー政策を継続するかどうかを決断しなければならない。原子力維持の場合、コストは3000億ユーロ(4150億ドル)に達するが、他の燃料による発電を選択した場合も同様にコストはかさむ。
フランスで稼働中の58基の原子炉の大半は1980年代の短い期間に建設され、このうち約半数は2020年代に設計寿命の40年を迎える。これを業界では「原子力の崖」と呼ぶ。

フランス国民の原子力発電に対する支持は伝統的に強かったが、2011年の福島原発の炉心溶融(メルトダウン)以降は揺らぎが生じているようだ。(中略)

EDFは既存の原子炉の運転寿命を50年から60年まで延長する案を提唱しており、米国の類似した型の原子炉は60年の運転許可が認められていると主張する。

しかし、運転期間の延長許可権限を持つ唯一の監視機関である仏原子力安全局(ASN)は、現時点で電力会社は運転延長を当然のものと考えるべきではないとの立場を重ねて示している。ASNは第一次見解を来年に出す方針で、最終意見の公表は2018-19年の見通しだ。(中略)

<決められない政府>

<安く、早く、環境に悪い>

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DH2E120140501?sp=true

(山本太郎参議院議員 オフィシャルブログより)

原発再稼働に関する“再”質問主意書
2014年04月23日 09:43

前回、原発立地自治体住民連合と一緒に質問主意書を提出しましたが、それに対する答弁書があまりにも酷い物でしたので、4月22日付で再度質問主意書を提出致しました。

 前回(4/11)の質問主意書と答弁書
 ⇒原発再稼働に関する質問主意書 (原発立地自治体住民連合) および 答弁書(PDF)

以下が今回提出した「再質問主意書」です

↓↓↓ 再質問主意書 ↓↓↓
https://www.taro-yamamoto.jp/questions/2637

Ruters 2014年 04月 18日 18:30 JST

インタビュー:原発は国家ぐるみの粉飾決算=吉原・城南信金理事長
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA3H06620140418/?sp=true
[東京 18日 ロイター] -脱原発路線を強力に主張する異色の地域金融機関トップとして知られる城南信用金庫(本店・品川)の吉原毅理事長が、ロイターのインタビューに応じ、原発コストが安いというのは将来負担を無視した国家ぐるみの粉飾決算に近いとの見解を示した。

また、新エネルギーの開発が新しい経済の活力を生み出すとの持論を展開した。

東京・神奈川を地盤に信金業界2番手の総資産3兆6000億円を持つ同信金は、地銀中位行に匹敵する規模を誇る。そのトップとして、金融業とエネルギーの政策のかかわりあいに関し、どのような本音を持っているのか聞いた。

―金融機関のトップが、政治的発言をするのが極めてまれだ。

「金融は、政治にかかわるべきではなないという意見がある。それは本来、権力にかかわることで金融が求めるべき理想がねじ曲げられ、利用されてしまう懸念が生じるために生まれた考えだ」

「しかし、金融に限らず企業の目標は、より良い国や社会を構築することだ。すべての企業は、理想の実現のためにある。経営者は、金儲けだけ考えればいいというのはおかしいのではないか」

―国論を二分する1つの側に付くことで、顧客からの不評を買わないか。

「消費者のニーズに応えることが企業、つまり消費者主権という考えは間違えていないか。例えば当社は、投機のためのゴルフ会員権購入のための融資はお断りする。そういう資金使途には貸せない。健全性とは何かを考え、顧客にも説明していく。それが金融マンの役割だ」

「福島第1原子力発電所の事故で分かったことは、将来の世代に責任を持てないエネルギーということだ。もはや原発は反社会的存在だ。原発を造る金を貸せと言われたら、お断りする」

―電力債は、金融機関の運用手段としても重要だ。

「東電の株式と社債は、事故後に売却した。金融機関は公共的な存在だ。東電の株式や社債に投資をするわけにはいかない」

―経済界の中には、コストの安い原発を稼働しないと、日本経済が立ち行かないという意見が多い。

「原発のコストの方が低いという人で、いやしくもビジネスマンや経済に携わる者ならば、会計の原則ぐらい勉強していただきたい。コスト計算には、直接原価と間接原価があり、そこで総合原価計算が行われる。原発は、今あるウランを使うだけならば直接原価は低い」

「では、その結果の間接原価はどうなのか。将来の廃炉費用や、使用済み核燃料の保管料や処理費用、工事費や人件費、地代がカウントされているのか。カウントされていない。われわれは今、時価会計で、将来に発生するキャッシュフローをすべて現在価値化し、負債計上している。原発にはそれが入っていない」

「1回事故が発生したら、天文学的なコストがかかる。貸し倒れ引当金の積み立ての考え方を入れれば、とんでもない引き当てを積まなければならない。これは、不採算というのではないか。国家ぐるみの壮大な粉飾決算だ」

――原発の再稼働ができなければ、値上げしなければならない。顧客の中小企業にとっても、それは経営上の困難になるのではないか。

「まず、原発の将来に発生する未計上のコストをちゃんと計上しなければならない。その上で、原発を再稼働させたら、もっと値上げをしなければならない」

「新しい電力産業が勃興してくれば、新産業としてモノづくりの復活にもつながる。例えば、石炭ガス化コンバインド発電やソーラーパネル、さまざまサービスも増える。工事やモノづくりに携わるわれわれの顧客たちにも恩恵がある。原発の再稼働では、新産業は生まれない」

――経常赤字を懸念する指摘もある。

「燃料の輸入によって、貿易収支が悪化し、経常収支が赤字に陥るのは日本経済にとってマイナスだという指摘は、本当に正しいのか。経常収支が赤字でも成長している国はたくさんある。日本は、黒字を溜め込み、結果的に円高になり、デフレから抜け出せなかった。輸出入のインバランスは、為替で調整される」

――大手銀行は、福島第1原発の事故後に、東電に対して巨額融資を行った。どのように評価する。

「第2の住専問題だという気がする。当時も、政府が保証するからとみんなが貸して、最後は損失となった。1980年代のバブル時も金融機関は公共性という考えを放棄し、その後、大きなツケを払わさられることになった。金融機関は、引き返す勇気を持つ必要があると思う」

――大手行は公共性を考えて貸しているのではないか。

「それは、公共性を勘違いしている。東京電力を生かすことが公共性ではない。安全でコストの安い電力サービスを継続的に安定的に保証することが公共性なのではないか。もっと見識を持たなければならない」

(インタビュアー:布施太郎 浦中大我)
(布施太郎 編集:田巻一彦)

Poeta Doctus -Essays & Lectures-
読みもの:カノコユリは百年の想いを秘めて原発の前に咲く

P.1 http://poetadoctus.web.fc2.com/archive/kanokoyuri.html

P.2 http://poetadoctus.web.fc2.com/archive/kanokoyuri2.html

生活の中で、美しきものが生き、同時に周りの人間への配慮が行き届いているという共同体は、身の周りにも気づけばあるだろう。それは誰にでもわかる確乎とした形ではなく、一時的にうつろいゆくものとしてあり、気がつかなければそのまま通 り過ぎるようなものかもしれない。

  カノコユリの咲く村

 私にとって忘れられない出会いのひとつがカノコユリの咲く村である。

 それは大学時代のことだった。私はふとしたことで、鹿児島県の川内原子力発電所建設に反対して、手づくりで風力発電をつくっている人たちに出会う。リーダーの名前は橋爪健郎といい当時も今も鹿児島大学の助手である。他には現地の青年たちもおり、彼らに誘われるがままに、原発建設現地へ足を運ぶようになった。

 1977年当時、市街地から12キロほど離れた過疎の農漁村地帯で、集落ぐるみで原発に反対していた地区が二つあった。大半の地区は補償金攻勢や・・・(続きを読む

焦点:原発停止で政府系に駆け込む電力業界、「国民負担」増大のリスク
2014年 04月 9日 06:35 JST

http://jp.reuters.com/article/jp_energy/idJPTYEA3707U20140408?sp=true

[東京 9日 ロイター] -電力会社による政府系金融機関への資金支援要請が相次いでいる。原発が止まり、収益が悪化して値上げでも対応できないと「駆け込む」姿は、「国頼み」のスタンスを鮮明にした。このまま「経営無策」を続ければ、値上げや公的資金の注入を繰り返し、国民負担を増大させることになるだろう。

<再値上げ言及に官邸は激怒>

「首相官邸サイドから経済産業省幹部に強い叱責があったようだ」──。北海道電力が電気料金の再値上げ検討を表明した今年2月17日の直後、北電を抑えられなかった経産省に対し、官邸側が激怒したと大手電力の関係者は語る。

4月1日からスタートした17年ぶりの消費税率引き上げ。その増税の心理的なマイナス・インパクトに追い打ちをかけかねない電気料金値上げを表明した北電に、官邸側のいら立ちが表面化したとみられている。

北電は昨年9月、家庭向けなど規制部門向けで平均7.73%の値上げを実施。翌18日には茂木敏充経産相が記者会見で「最大限の経営効率化など値上げ回避に努力することが重要」と発言し、再値上げにクギを刺した。

だが、そのけん制発言を振り切ってまで、値上げ表明せざるを得ない事情が北電にはあった。

<経営を左右する不透明な原発再稼動>

2011年3月11日の東日本大震災を契機に、定期検査で停止した3基の原子炉が再稼働せず、コストの高い火力発電で代替した結果、収益が急速に悪化した。

3期連続の経常赤字によって、2011年3月期に23.2%だった自己資本比率(単体)は14年3月末時点で5%を割り込む見通しまで低下することになった。

このまま赤字を垂れ流すことになれば、債務超過の可能性も出てきたため、日本政策投資銀行に「優先株」の引き受けを要請したことが1日、明らかになった。

原発がいつ稼働できるのか──という問題と、電力会社の経営は密接に絡んでいる(表参照)。

ロイターが電力会社へのアンケートや専門家、市場関係者への取材をもとに2日にまとめた調査では、全国48基中、「17基の再稼働が困難」との見通しだ。

その中で、北電の泊原発の3基は「再稼働可能」の分類に入っているが、それでも経営への影響が深刻さが増している。

北電は昨年7月、原子力規制委員会に泊1─3号機について、審査を申請した。だが、再稼働のメドは見えてこない。1、2号機は初期段階で審査書類の不備を指摘され、審査が現段階で大幅に遅れている。

3号機は、緊急時に原子炉格納容器を冷却する配管の追加を求められた。北電側は、工事は「数カ月では終わらない」と説明。早期の運転再開が展望できない以上、「赤字構造解消には早期の値上げが必要」としている。

北電に続いて九州電力による政投銀への1000億円規模の資本支援要請も明らかになっている。

規制委は3月、九電川内原発1、2号を「優先審査」の対象に選び、現在、集中審査中。早ければ夏にも再稼働する可能性がある。

九電がほぼ同時に申請した玄海原発3、4号も、全国48基の中では審査は先行している。北電とは対照的に、原発の運転再開の時期によっては、政投銀による資本注入を回避できるシナリオもありそうだ。

<関西電力の先行きに厳しさ>

原発を保有する地域電力9社中、原発依存度(11年3月期までの5年平均)が43%と最も高いのは関西電力だ。ある経産省幹部は「東電を除けば、経営状況が最もきついだろう」と指摘する。

実際、14年3月期までの3年間の当期赤字の累計額は約5800億円となり、自己資本比率(連結)は11年3月期の24.8%から13年12月に16.5%に低下。

昨年7月に高浜3、4号と大飯3、4号の再稼動審査を規制委に申請したものの、合格のメドは見えていない。

八木誠社長は3月26日の記者会見で、この夏の原発再稼働について「大変厳しい状況」と述べた。

再稼働が遅れ、代替策としての再値上げに手間取れば、15年3月期の黒字化が難しくなる。4年連続の赤字となれば、将来の黒字化を前提に計上した約5000億円の繰り延べ税金資産の取り崩しを迫られる可能性もある。

原発依存の経営によって「最適な火力電源の構築が進まなかった」(エネルギー・アナリスト)という構造問題も抱える。

ここにきて東北電力と九電は火力電源について、自社応札を打ち出した。だが、関電は「経営状況を鑑みると、(自前の発電所建設には)大規模な資金調達が必要」(八木社長)と説明し、外部資金に頼らざるを得ない状況であることを明らかにしている。

<中長期も廃炉という負担>

また、関電は古い原発を抱えているという不利も付いて回る。ロイターの調査では、美浜1─3、高浜1、2、大飯1、2の計7基について、運転開始から40年前後という古さを主因に再稼働困難と判定した。

再稼働ができなければ、いずれ廃炉を迫られる。経産省は、廃炉決定の場合、関連費用の引き当て不足を一括計上する従来の仕組みを昨年10月に変更。廃炉決定後も10年間は電気料金で回収できるようにした。

将来の廃炉コストは、「原子力発電施設解体引当金制度」に基づき、電力会社が見積り額を算定し、電気料金に上乗せしてきた。見積りの合計額は約2兆8000億円(12年度末、東電福島第1原発5・6号機含む)に上る。

だが、解体費用、解体に伴って生じる廃棄物の処分、施設撤去までの維持費、運転中に出た低レベル放射性廃棄物の処分などで構成される廃炉コストが、上記の見積額に収まる保証はない。

廃炉作業が始まっている東海原発(出力16.6万キロワット)の場合、解体に347億円、廃棄物の処分に538億円の計885億円という見積もりになっている。

一方で、古い原発は引当金が積み上がっており、仮に現時点で廃炉が決まっても、10年間の分割で関連費用を計上できる。各社の収支を圧迫するような巨額の費用負担を回避する仕組みができている。

だが、原子力関連施設のコストは当初の見積もり通りとなる保証はない。電力業界が青森県六ヶ所村に建設した使用済み核燃料の再処理工場施設(着工1993年)の建設費用は、当初7600億円という見積もり額が、2006年には3倍近い2兆1900億円に跳ね上がった前例がある。

廃炉に関していえば、原子炉解体後に出る廃棄物の処分場がそもそも見つかっていない。福島第1原発事故後、国のエネルギー政策議論に参加した伴英幸氏(NPO法人、原子力資料情報室共同代表)は、「処分場の部分が不確定要素となる。(廃炉コストは)現在の見積額では収まらないだろう」と話し、電力会社か国民に将来、新たな負担が発生する可能性を示唆した。

<総括原価廃止方針でも乏しい改革機運>

現在の枠組みでは、電力会社の経営能力を超えると認定される赤字部分は、政策投資銀行など損失が発生した時には税金で補てんされるマネーと、電気料金の引き上げという2つのルートで埋め合わせることになる。

いずれも最終的には納税者・利用者の負担になる。鉄鋼業界から東京電力会長に転じた数土文夫氏は「(東電は)地域独占や総括原価主義に安住してきた」と指摘する。

電気料金高止まりの要因と指摘されてきた「総括原価方式」は、政府が導入を決めた電力システム改革の第2弾の「小売り全面自由化」が実施される2016年度以降、競争の仕組みを入れることが困難な送配電部門のコストを除き、順次廃止される。

首都圏など大都市圏の電力市場には、都市ガスや石油、商社など異業種からの参入が見込まれるが、経産省は、電力会社同士の本格的な競争の進展こそ、電気料金の高止まりを是正すると期待する。

ただ、2000年3月に始まった、大口需要家を対象とした電力小売り部分自由化では、大手電力が営業区域外の顧客に供給した事例は、九州電による中国電力(9504.T: 株価, ニュース, レポート)管内にある商業施設に対してのわずか1件にとどまる。

経産省側は、「日本には9社も大きな電力会社がある」(中堅幹部)と、競争進展に向け、業界の意識改革を求める。

これに対し、電力各社のトップは、原発の稼働停止が長期化する中で、電力システム改革への取り組みよりも、自社管内の安定供給を優先させる意向が強く、電力自由化に対応する改革機運に乏しいのが実態だ。

(浜田健太郎 取材協力 浦中大我 編集:田巻一彦)

しんぶん赤旗 2014/4/3
原発売り込みは「無責任」 笠井氏、原子力協定締結承認案を批判
 新「安全神話」の輸出

 日本企業が原発をトルコ、アラブ首長国連邦(UAE)の両国に輸出できるようにする原子力協定締結の承認案が2日、衆院外務委員会で、自民、公明、民主各党などの賛成多数で可決されました。福島第一原発事故後、日本が原子力協定に署名したのは両国が初めて。日本共産党の笠井亮議員は、「自国で重大事故を起こした政府が、原発を率先して売り込むなど無責任そのものだ」と激しく批判しました。(中略)

 委員会採決に先立って反対討論した笠井氏は、福島原発の現状を「汚染水問題などの深刻な状況にあり、収束のめどすらたっていない」と示したうえで、他国に「世界一安全な原発を提供する」などと原発を売り込む政府の姿勢を批判し、新たな「安全神話」の輸出は許されないと強調しました。(中略)

 安倍政権は両国のほかに、核兵器を保有するインドや、サウジアラビアなどとも協定締結に向けた交渉をすすめています。

Reuters 2014年 04月 2日 12:20 JST

焦点:国内原発の再稼働展望は3分の1以下、17基は困難か
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYEA3102Y20140402?sp=true
[東京 1日 ロイター] -国内の原発48基中、再稼働が展望できるのは全体の3分の1に届かない14基で、3割強の17基は不確実性を払しょくできず、残り17基は再稼働が困難とみられる──。

ロイターが電力会社へのアンケートや専門家、市場関係者への取材で電力会社の厳しい状況が浮き彫りになった。3年前の東日本大震災発生前に比べ、原発は半減するとの予想も聞かれる。(中略)

再稼働ができない原発は廃炉が不可避となり、電力各社は難しい経営判断を迫られる。原発減少に伴い、どのような代替電源を確保するのかも国家的な課題になりそうだ。

<申請済み・申請時期明示は18基> (中略)

<川内原発、夏にも再稼働の公算>

規制委は3月中旬、九州電力川内1、2号(加圧水型=PWR)を「優先審査」の対象に選んだ。規制委の田中委員長は、優先対象は審査合格の見通しが立ったものとの見解だ。

安倍政権は、審査に合格した原発は、地元の了解を前提に再稼働させる方針を示している。鹿児島県の伊藤祐一郎知事はじめ立地地域から目立った反対は聞かれず、川内原発が今夏にも再稼働する可能性が浮上している。

川内1、2号が優先対象となったことで、同時期に申請した関西電力高浜3,4号と大飯3,4号、四国電力伊方3号、九州電玄海3、4号、北海道電力泊1─3号の計10基(いずれもPWR)の審査は、足踏み状態となっている。

ただ、優先審査は新規制基準における合格事例という「模範解答」を示すことで、後続の審査をスピードアップさせる狙いもあり、川内1、2号の審査が終了すれば、他の審査が加速する可能性もある。

重大事故対策に絡んで泊1─3号の審査は遅れ気味だが、もともと先行申請した原子炉は、各電力が自信を持つ主力級だ。先行組のPWR12基はどれも地元の強い反対が聞かれず、いずれは再稼働が可能とみられる。

<高経年原発に40歳の壁> (中略)

<燃えにくいケーブルの壁> (中略)

<電力経営者からも廃炉可能性の言及> (中略)

<予想困難な活断層問題> (中略)

<東電は原発を動かせるか>

東京電力は、柏崎刈羽6、7号機(BWR)の適合性審査申請で、規制委から6、7号機直下以外の破砕帯(断層)についても、敷地内外の調査・評価に関するデータの提示を求められた。現地での掘削調査などが必要となり、結論に至るまで長期化する可能性もある。

一方、福島第1原発では、2月にタンクから100トンの汚染水漏れが発生し、多核種除去装置(ALPS)の停止、作業員の死亡など足元でもトラブルが多発している。原発事故を抱える東電による再稼働に向けた審査は「他の原子炉と違い、極めて特殊な事情がある」(規制委の田中俊一委員長)とみられており、福島第1の安定化が実現しないと、柏崎刈羽の審査にも影響が出かねない。

仮に規制委が柏崎刈羽6、7号の申請に合格を出しても、東電に対して厳しい姿勢を崩さない新潟県の泉田裕彦知事が再稼働を容認するかどうか予断を許さない。

泉田知事など地元自治体の首長だけでなく、重大事故を起こした東電が原発を再稼働させることの是非をめぐっては、国民レベルでの論争に発展する可能性も否定できない。

東電の数土文夫会長(1日就任)は、3月31日の記者会見で、柏崎刈羽6、7号が再稼働しない場合、年末をめどに電気料金を再値上げするかどうかの見極めを行うとの意向を明らかにしている。

<浜岡原発めぐり住民投票あるか> (中略)

<原発半減時代の到来か> (中略)

国内48基の再稼働可能性に関するロイター調査は以下の通り。

原子炉 出力(万kw) 事業者 運転年数 審査申請・予定 再稼働の可能性
川内1 89 九州 29 優先審査中 可能
川内2 89 九州 28 優先審査中 可能
伊方3 89 四国 19 申請済み 可能
玄海3 118 九州 20 申請済み 可能
玄海4 118 九州 16 申請済み 可能
高浜3 87 関西 29 申請済み 可能
高浜4 87 関西 28 申請済み 可能
大飯3 118 関西 22 申請済み 可能
大飯4 118 関西 21 申請済み 可能
泊1 57.9 北海道 24 申請済み 可能
泊2 57.9 北海道 23 申請済み 可能
泊3 91.2 北海道 4 申請済み 可能
島根2 82 中国 25 申請済み 可能
女川2 82.5 東北 18 申請済み 可能
東通1 110 東北  8 時期未定 不確実性あり
女川1 52.4 東北 29 時期未定 不確実性あり
女川3 82.5 東北 12 時期未定 不確実性あり
柏崎刈羽1 110 東京 28 未定 不確実性あり
柏崎刈羽2 110 東京 23 未定 不確実性あり
柏崎刈羽3 110 東京 20 未定 不確実性あり
柏崎刈羽4 110 東京 19 未定 不確実性あり
柏崎刈羽5 110 東京 24 未定 不確実性あり
柏崎刈羽6 135.6 東京 17 申請済み 不確実性あり
柏崎刈羽7 135.6 東京 16 申請済み 不確実性あり
浜岡3 110 中部 26 2014年度中 不確実性あり
浜岡4 113.7 中部 20 申請済み 不確実性あり
浜岡5 138 中部 9 未定 不確実性あり
志賀1 54 北陸 20 未定 不確実性あり
志賀2 120.6 北陸 8 未定 不確実性あり
伊方2 56.6 四国 32 未定 不確実性あり
玄海2 55.9 九州 33 未定 不確実性あり
福島第二1 110 東京 32 未定 困難
福島第二2 110 東京 30 未定 困難
福島第二3 110 東京 28 未定 困難
福島第二4 110 東京 26 未定 困難
東海第二 110 日本原電 35 時期未定 困難
敦賀1 35.7 日本原電 44 時期未定 困難
敦賀2 116 日本原電 27 時期未定 困難
美浜1 34 関西 43 時期未定 困難
美浜2 50 関西 41 時期未定 困難
美浜3 82.6 関西 37 時期未定 困難
高浜1 82.6 関西 39 時期未定 困難
高浜2 82.6 関西 38 時期未定 困難
大飯1 117.5 関西 35 時期未定 困難
大飯2 117.5 関西 34 時期未定 困難
島根1 46 中国 40 未定 困難
伊方1 56.6 四国 36 時期未定 困難
玄海1 55.9 九州 38 未定 困難