Category Archives: 論説・論考

DIAMOND ONLINE 2015年1月26日

「科学的判断」を避ける原子力規制委・規制庁
『悪魔の証明』をいつまで求め続けるのか?
http://diamond.jp/articles/-/65626

結論ありきのピア・レビュー会合

原子力規制委員会とその事務局である原子力規制庁は、原子力発電所の敷地内に“活断層”が絶対ないことの証明――、いわば『悪魔の証明』を、日本原子力発電(敦賀原発2号機、福井県敦賀市)に対して求め続けている。
規制委・規制庁は、これと同じことを、東北電力(東通原発;青森県東通村)にも求めている。これは、あまりにも「非科学的」だと言わざるを得ない。

敦賀原発2号機は、規制委・規制庁による「正式審査」の前段階の“プレ審査”で止まっている。これに関する経緯や現況については、本連載第37回拙稿『2015年、原子力規制委員会は「科学的・技術的」な集団へ脱皮できるか?』に詳しい。
規制委・規制庁は、敦賀や東通に係る“活断層”の扱いに関して、いったい、いつまでこんなことを続けるというのか?
続きを読む

ブレる会合の位置付け 異論を唱える専門家
科学的根拠に目を背け 政治的意向優先という愚策

LITERA 2015.01.14
天皇が安倍首相の原発再稼働を批判?
キャリア官僚による告発小説の衝撃の内容
http://lite-ra.com/2015/01/post-786.html

 安倍政権が原発再稼働に前のめりになっている。国会で安倍晋三首相が「(原子力規制委員会の基準に)適合すると認められた原発から順次再稼働を進めたい」と述べたとおり、新基準に合格した九州電力川内原発が今年春にも運転を始める見通しだ。続く関西電力高浜原発にもゴーサインが出た。安全審査申請中の原発は合計14原発、21基にものぼる。

 そんな政権の姿勢に水をさすかのように、永田町、霞ヶ関界隈で密かに読まれ、静かな波紋を広げている本がある。『東京ブラックアウト』(講談社)だ。言わずと知れた、ベストセラー『原発ホワイトアウト』の第2弾。現役キャリア官僚の匿名作家、若杉冽による“リアル告発ノベル”である。

 前作は「原発はまた、爆発する」という衝撃的な副題のもと、政官財のトライアングルがなぜ原発再稼働に固執するのか、その真の理由を克明に描き出した。端的に言うと、原発再稼働とは、原発によって生み出されるレント(超過利潤)と呼ばれる巨大マネーの還流システム(小説では「モンスター・システム」と表現されている)の再稼働に他ならない。その目的のため、電力会社、官僚、政治家が何を考え、どう行動しているのかを暴き出した。(つづきを読む

本:東京ブラックアウト 著:若杉冽 講談社
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062193412

この原油安でも原発再稼働の意味はあるのか!
2015年はエネルギー問題で幕開け

2015.01.10(土)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42632

今週はエネルギー問題に関する記事が上位3つを占めた。1位「米国を潰せ!サウジが仕かけたエネルギー戦争」は、現在の原油安は米シェールガス・オイル企業を苦境に追い込むため、世界最大の産油国サウジアラビアが仕かけたエネルギー戦争だというものだ。
つづきを読む

琉球新報 2014年12月9日
<社説>衆院選 脱原発と再稼働 福島の教訓忘れた政策問え
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-235565-storytopic-11.html

 原子力発電に頼らないエネルギー政策を国民の多くが望んでいる。各種世論調査で共通した傾向だ。にもかかわらず、安倍政権の2年間で止まっていた原発が再稼働し、「原発回帰」が強まっている。
 東日本大震災による福島第1原発事故により、大量の放射性物質が放出された。多くの福島県民が今も避難を強いられ、美しい風土が汚染された。原発事故に人生を左右された人の無念に思いをはせねばならない。

 今衆議院選挙で、原発再稼働と脱原発の是非が厳しく問われねばならない。各党は原発が存続していいのかをはっきり示すべきだ。徹底した論戦を求めたい。

 福島第1原発事故は、巨大地震や津波への脆弱(ぜいじゃく)性、放射性物質の拡散を制御できない原発の危険性を突き付けた。日本のエネルギー政策の一大転換点となり、エネルギー政策の根本に「脱原発」が据えられたはずであった。
 当時の民主党政権、そして、2012年12月に政権を奪取した安倍晋三首相も当初は原発を全て停止してでも、事故の危険性を減らす政策を優先してきた。

 しかし、2年足らずで、安倍首相は原発の再稼働推進、原発回帰に前のめりになっている。ことし4月に打ち出された「エネルギー基本計画」は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付けた上で、電源の構成比は先送りした。
 2年前の衆院選で、自民党は「原子力に依存しない経済・社会構造の確立を目指す」と「脱原発」を力説していた。13年7月の参院選から「脱原発」の姿勢を薄め、「エネルギー政策をゼロベースで見直す」と方針を変えた。
 今衆院選では原発依存度を「可能な限り低減させる」とし、原発存続を前提としている。これまでの公約に明白に反するものだ。

 対する野党側も、民主党は「責任ある避難計画がなければ、再稼働すべきでない」とするが、「脱原発」を薄めた。与党の公明、野党の維新も再稼働を容認する。
 明確な反対は共産、社民、生活、新党改革の4党だけである。安倍首相は「再稼働も争点」と言うが、将来の原発比率、再稼働させる原発数の目標値を示さないため、論戦は深まらないままだ。

 防災対策が少しずつ厚みを増したとはいえ、原発の危険性は変わっていない。福島の過酷事故の教訓をないがしろにしてはならない。

火災も原発事故も、
大災害に遭うと人間は動けなくなる
フクシマを予言していた消防士(前篇)

2014.11.27(木) 烏賀陽 弘道
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42302

2011年3月11日に福島第一原発事故の取材を始めて以来、私がずっと問い続けている疑問は「なぜ原発周辺の住民避難は失敗し、多数が被曝するという最悪の事態になったのか」である。本欄で報告してきたような、フクシマの地元市町村長や被災者住民、当時の政府関係者(首相官邸、経済産業省と原子力安全・保安院、原子力安全委員会など)への取材すべては、その問いへの答えが知りたいがゆえである。取材すればするほど、政府が準備していた住民避難のための法律や制度、組織といった備えは「何もないのに等しい」くらい甘いものだったことが分かってきた。

 すると今度は「そういった避難体制の不備を指摘して、政府に危険を警告した人はいなかったのだろうか」という次の疑問が湧いてきた。これまで、原発災害を警告していた人を・・・(つづき

ダイヤモンド・オンライン 2014年11月13日
川内原発再稼働で“ドミノ倒し”は起こるのか
九州電力に求められる「脱・お墨付き文化」
http://diamond.jp/articles/-/62073

安倍政権では
再稼働は「想定内」

 九州電力川内原子力発電所1、2号機の再稼働について、立地自治体である薩摩川内市の同意に続き、鹿児島県知事が同意。すでに原子力規制委員会は新規制基準に適合していると9月に判断しており、今回の地元同意が出されたことで、再稼働へ向けて大きく前進した。

 原発反対の声は依然として日本全国で根強く残る。しかし、原発再稼働を進めたい政府内では「川内モデルを広める」という声もあり、反対派の間では「このまま再稼働がドミノ倒しのように続くのでは」という不安も囁かれ始めた。

 今後、原発行政はどのように進むのだろうか。“再稼働ドミノ倒し”は起こるのだろうか。

(続きを読む)

マガジン9 -風塵だより #005-

原子力規制委員会
田中俊一委員長の悲しい変貌
http://www.magazine9.jp/article/hu-jin/15907/

 田中俊一氏という人がいる。
 原子力規制委員会の委員長だ。柔和な顔と穏やかな話し方で、いかにも学者然とした風貌の人である。その田中委員長の物言いが、このところ妙に乱暴になってきている。どうしたのだろう?

 2011年3月11日の東日本大震災と、それに続く福島第一原発の過酷事故。その事故の反省の上にたって作られた(はずの)原子力規制委員会委員長に、田中俊一氏が就任したのは、2012年9月のことだった。・・・(つづきを読む

日経 電子版 2014/11/10 7:00
原発の損害賠償制度はどうあるべきか みずほ銀行産業調査部調査役に聞く
編集委員 滝順一
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO79324920V01C14A1000000/

 国策民営で進めてきた原子力発電であっても、ひとたび大事故が起きれば、発電所をもつ電力会社が無限責任を負う。こうした現行の原子力損害賠償制度は、民間企業が原子力事業を営むうえで大きな障害となりうる。制度の課題などのリポートをまとめた市川美穂子みずほ銀行産業調査部調査役に聞いた。

「安全神話」にとらわれていた

官民の役割分担を考えていく出発点に

取材を終えて

全文を読むには会員登録が必要です

現代ビジネス 2014年10月21日(火)
核燃料の「最終処分実験」18年の現場ルポ
早急な計画見直しが原発再稼働には不可欠
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40826

奈落に落ちる――。

そんな感覚にとらわれながら高速エレベーターで超深地層の地下300mの世界に降り立った筆者の目の前に、硬い花崗岩の地層をくり抜いた細長いトンネルが現れた。ここは岐阜県瑞浪市。独立行政法人・日本原子力研究開発機構(JAEA)が、“核のゴミ”を処分する場所や方法を探る実験を進める「瑞浪超深地層研究所」の心臓部である。

18年たっても「核のゴミ問題」対策は進まず

誤解されがちなので触れておくが、この研究所には“核のゴミ”は一切持ち込まれていない。最終処分地を選定したり、実際の処分を始めたりする時に備えて、あらかじめ必要になりそうな技術を蓄積している研究所だ。

歳月の流れるは早い。瑞浪市が所有する土地を賃借して瑞浪超深地層研究所が建設され、最終処分に向けた実験を始めたのは1996年のこと。それから早くも18年が過ぎ去った。

問題は、その18年間という時間を無駄にしたことだ。

原子力行政は問題の先送りを続け、具体的な核のゴミの処分策作りが進まなかった。それにもかかわらず、各地の原発は運転を続け、使用済み燃料は溜り続けている。(・・・続きを読む

圧迫感のある閉所で地道な調査と実験は続く

中立機関による「地下水の年代測定」が必要では?

高レベル放射性廃棄物の最終処分策の早期確立を!

日刊ゲンダイ 2014年10月2日
御嶽山噴火を無視 政府追認する「原子力規制委」の存在意義
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/153804

 川内原発再稼働に突き進む安倍政権。原子力規制委員会は“最後のとりで”との期待もあったが、ダメだった。政府方針の“追認機関”にすぎないことがハッキリした。

 今回の御嶽山の噴火について菅義偉官房長官は、29日の記者会見で「川内原発再稼働への影響を与えないと思う」と早々と宣言。今回の噴火事故を受けて再稼働を見直すことを否定したが、1日の会見で原子力規制委員会の田中俊一委員長も「(今回の噴火が川内原発再稼働に影響を与えるのかについて)再検証するべきことではない」と菅官房長官に同調したのである。

 今回、御嶽山の噴火でわかったのは日本の火山学者の予知・予測のつたなさと、想定をはるかに上回る噴火が起きて、しかも、何の警告も出されていなかったことから多くの犠牲者を出したという事実である。

 日本の火山学者の予知レベル、危機管理態勢の不備など検証すべきことは山ほどある。実際、一部の火山学者からは「地震動が始まっていたのに登山者に警告を発したり、登山自粛を求めなかったのは問題だった。地元観光業への打撃を気にしすぎたのではないか」という声が上がっている。

「現象が全然違う」

 そこで田中委員長に、「日本の火山学者は国際レベルに達しているのか、危機管理態勢が整っているかも含めて再検証するべきではないか」と聞いてみたのだが、その答えにはガックシだ。

「火山学者のレベルについて私が申し上げる資格もないし、知識もありませんし、<社会的対応がどうこう>というべきことではない。御嶽山の水蒸気爆発による噴火と、(川内原発で問題になっている)超巨大噴火は、起こる現象が全然違う」とか言って、見直すそぶりもないのである。

 異なる噴火現象といっても、同じ日本の火山学者の知見を基に予測や対応を考えているのだから、その学者が信用できなければ、議論の前提が崩れてしまう。まして、議論しているのは原発の安全性や避難計画なのである。国内外の専門家や危機管理のエキスパートに相談すらしないのは異常に見える。

 政府の言い分にお墨付きを与えるだけの規制委であれば必要ないし、田中委員長の適性も問われる。

(取材協力=ジャーナリスト・横田一)